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#四十六 谷中墓地(二)

 広い墓地の中を、捌胃婆を捜して延々歩く。


 昼間でも静かな場所が、夜中だとさらに静まりかえる。


 聞こえるのはふたりの足音と、枯れ枝が風に鳴る音だけ。


「……」


「なあ、アニキ」


 静寂に耐えきれなくなったのか、コガネが話しかける。


「ん?」


「アレだよな、幽霊ってのは夏に出るもんだから、こんな真冬に出たりなんかしないよな?」


 こころなしか震えて見えるのは、寒さだけが原因ではないようだ。


「そりゃわからねえぞ。ここは彰義隊しょうぎたい(※三十二)の戦いがあった場所からも近いからな。恨みを持ったやつらが出てきてもおかしくない」


「お、脅かすなよ」


 コガネは露骨にビビった様子で、小波の外套にしがみついて辺りをキョロキョロ見回す。


 そこにガサガサと物音。


「ひゃあ!」


 飛びつくコガネの口を、手でふさいで黙らせる小波。


「もごもごもご!」


「落ち着け、人間だ」


 小声で教えられてよく見れば、前方に人影が見える。


 小波たちの存在には気付いてないらしく、まっすぐどこかへ向かう様子。


「後を追うぞ」


「お、おう」


 相手が幽霊でないとわかって落ち着いたのか、コガネは小波の首筋にしがみついたままだったのに気付いた。


「わ、悪い」


 慌てて離れるコガネ。気のせいか顔が赤い。


「い、いや気にするな」


 そう言う小波も顔が赤い。


「……」


「……」


 無言でチラチラ互いを見合う。もうこいつら、ふたり揃って面倒くせえ。


 ずっとそうしてるワケにもいかないので、ふたりは人影を追って先へ進んだ。

※三十二 彰義隊…慶殴四年、薩長政府により上野の寛永寺に蟄居ちっきょすることになった徳川慶喜の助命嘆願を目的として、旧幕臣や政府に不満を持つ士族たちが集まった集団。上野を拠点に慶喜や江戸市中の警護にあたったが、同年五月に政府軍の攻撃を受け壊滅した。

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