#四十一 配達会議
コガネが眠ってる間に、紅葉が逓信省から討伐状を持ってきた。
「それって、こいつなんじゃねえの」
そう言って紅葉が見せた便箋には、「捌胃婆」の文字。
「出没場所は谷中。夜中に出歩く人間を襲って食い殺すらしい」
「じゃあコガネが聞いた悲鳴っていうのも……」
「おそらくそうだろう」
犠牲者の死体は専門の職員がこっそり処理するので、一般の市民に知られることはほとんどない。それでも隠しきれない情報は漏れ出して、噂として世間に広まる。
噂が大きくならないうちに、根元を断つのも分室の仕事だ。
「ちょうどいいや。小波、これおまえらがやれ」
紅葉は便箋を封筒に入れて、小波に投げてよこす。
「コガネには危なくないですか」
これまでに配達してきた相手と較べても、ヤバそうな匂いがプンプン漂う。
「だからって、放っておくワケにもいかねえだろ」
それでもまだ不満そうな小波に、紅葉が追い討ち。
「あの子を毎晩、寝不足にさせるつもりかよ」
「……」
自分の席で爆睡するコガネに視線を向ける小波。
そんな苦悩を知ってか知らずか、コガネはのんきに「うーん、そんなにうどんばっかり食えねえよう」なんて寝言をつぶやく。どんな夢みてるんだよ。
「まあ、コガネちゃんを守ってやるのもおまえの仕事だ。万一あの子に何かあったら、シズ子さんとふたりがかりでおまえを殺す」
「洒落になってないです……」
紅葉はたぶん洒落で言ったのだろうが、シズ子は目が本気だ。
こうして、当事者が眠ってる横で今回の配達が決まったのだった。




