#四十 コガネの部屋(二)
その日の夜。
小波とシズ子は帰り、家主のお婆さんと作った夕飯を食べて、あとは寝るだけ。
「……」
布団に入ってみたものの、しずまりかえった部屋にひとりで居るとなかなか寝つけない。
「ここのところ、ずっとシズ子さんと布団を並べて寝てたからな……」
小波たちと知り合う前は、ずっとひとりだったはずなのに、たった数日で寂しく感じてしまうのは、弱くなったからなのか。
なんてことを考えてたところ。
「ギャーッ!」
外から悲鳴が聞こえて、布団から飛び起きる。
「なな何だ何だ!?」
慌てて窓を開けるが、外は真っ暗で何も見えない。
「ギャーッ!」
また悲鳴。
外から聞こえてくる以上、お婆さんに危害はない模様。
とはいえ何が起きてるのかわからない上、声が大きいのでとても寝られたものではない。
悲鳴はコガネがウトウトしかけたら再発する形で、夜明けまで続いた。
〒
「――というワケで、寝不足なんだ」
「あらまあ」
翌日の郵便局分室。
コガネは小波の席を占拠して、机に突っ伏したままうめく。
「それで、お婆さんは無事だったの?」
シズ子の問いに、半開きの目で答えるコガネ。
「うん。毎晩のように起こるからすっかり慣れちゃって、平気で寝られるようになったんだって」
「じゃあコガネも、早くその域までたどり着かないとな」
「着きたくねえよ……」
相当疲れてる様子で、ツッコミにもキレがない。
「ごめんね、変な部屋を紹介しちゃって。とりあえず、夕方までは眠っていていいわ」
「そうさせてもらいます……」
言うが早いか、すうすうと寝息を立てるコガネ。
「俺の席……」
小波のつぶやきは、すでに眠りに落ちたコガネには届かない。




