#三十六 暴走機関車(三)
宙宙列車は昆虫のように、裏面にびっしり生えた無数の足をわさわさ動かし続ける。
「じゅえっぷう」
上下が逆さになった状態で、苦痛だか恐怖だかに顔を歪める列車。
小波はプラットフォームによじのぼると、列車の眉間に銃口を突きつけた。
「御伽創死――擦布滑落」
だしゅ。
「ぼぅあ」
銃声と共に頭を撃ち抜かれる列車。
血と脳髄を惜しみなく撒き散らして、辺りはちょっとした地獄絵図。
そして列車の姿はだんだん薄れて――
「わあ、待って待って!」
コガネの声に小波が顔を上げると、さらに声が続く。
「見るな、あっち向いてろよぉ!」
叫ぶコガネは丸裸。一度貉に戻った際に脱げて、そのままになってた模様。
「服、服はどこぉ?」
小波たちが動き回った間にどこかへ行ったのか、小波が辺りを見回しても見つからない。
「線路に落ちたかな」
コガネに告げようとするけど、怒鳴られる。
「だからこっち向くなって!」
「無茶言うなよ……」
貉に戻ればいいのに、動転するあまりふたりとも気付いてない模様。
〒
「くすん、もうお嫁に行けない」
ようやく服を見つけて着替えも終えたコガネだが、まだ機嫌が直ってない。
小波もどう慰めていいか困りつつ、声をかける。
「えーと、まあアレだ。幼粘鬼を倒してからそういう特典挿画がなかったから、そういう場を提供したんだと思えば」
「意味がわかんないよ!」
そして慰めにもなってない。
「とにかく心配するな。嫁に行けないなんてことは絶対にないから」
「え? それって……」
顔を赤くするコガネに、小波は力強くうなずく。
「相手の男には、黙っといてやるから」
「死ね!」
コガネの全力パンチが、小波の顔面をとらえた。




