#三十五 暴走機関車(二)
「ごんちゃりいいいい」
常軌を逸した声をあげながら、宙宙列車が小波に突進する。
その車内では、コガネが暴走を停めようと奮闘するが、停まる気配はどこにもない。
「あーもう、どうすりゃいいんだこいつは!」
あっちこっち叩いても蹴っても勢いは止まらない。
列車はコガネを振り落とそうと、走りながら激しく全身を左右に振るわせる。
傍から見たら、全身がものすごくかゆい生き物にも見える。
「くそっ、どこを狙えばいいんだ」
小波は御伽創死を構えるけど、的が動きまくるせいで狙いが定まらない。
列車は迫る。このまま轢かれるワケにもいかない。
「ばじゅちゅちゅちゅ」
轢かれる寸前で、横っ飛びに跳ねてかわす小波。
勢い余ってプラットフォームから転げ落ちる。
「あぎゅ?」
小波を見失って、動揺する列車。自身も線路へ落ちそうになって、大きく旋回する。
「くっそー、いいかげんに停まれっつーの!」
自棄になったコガネが石炭をくべるシャベルをぶん回したところ、偶然にも停止桿を直撃。
「ごっは」
均衡を失い、足がもつれる列車。本数の多さが裏目に出たか。
列車の身体が大きく右に傾き、そのまま倒れた。
「べぎゅんどぅるうう」
プラットフォームにひっくり返って、全ての足をわさわさうじゃうじゃと動かす。
これまでで一番気持ち悪い。
「コガネ!」
叫ぶ小波に負けない声量で、倒れた列車の中からコガネが答える。
「オイラは平気だから、早くとどめを!」
小波は少し躊躇して、吹っ切るように御伽創死を構えた。
「……わかった」




