#三十二 新橋駅(三)
「ぼおおおおお」
不気味な声をあげながら、線路を走ってきたのは。
機関車を何分の一かに縮小した模型を思わせる車体。
しかしその先頭には、なぜか人間の顔がある。
「ぼおおおおお」
声は頭の煙突ではなく、顔の口から出てるらしい。
「何これ、すっげえ気持ち悪い!」
「おまえ、表現が直球すぎ。まあ確かに気持ち悪いけど」
小波はコガネを制しつつ、手に持った封書を示す。
「えーと、おまえが宙宙列車だな?」
「ぼおおおおお」
話が通じてるのかどうかよくわからない。
とはいえ返り血に汚れた車輪、それに正気とは思えないイッちゃった表情を見れば、どのみち討伐は避けられない。
「明磁政府の命により、おまえを討伐する」
宣告してから、御伽創死を構える。
「アニキ、気をつけて!」
「心配するな、所詮こいつは線路の上を走ることしか――」
できないと言いかけたところで、宙宙列車はその場から大きく跳躍。線路を外れてプラットフォームに乗り上げる。
「どわあ!」
あやうく人身事故になりかけて、慌てて左右によけるふたり。
列車は見た目に反して小回りのきく動きで、プラットフォームの上を巧みに旋回して小波に向き直る。
「ぼおおおおお」
「ボーボーうるせえんだよ。てめえは下の毛生えたばっかの小僧か」
下ネタで毒づきながら、御伽創死を構え直す小波。
いつの間にかすっかり日も沈み、辺りは月明かりに照らされる。




