#二十七 来訪者
「♪おそーうじー、おそーうじー。お部屋がきれいになると楽しいなー」
郵便局分室。
コガネが頭に三角巾を着けて、はたきで部屋のホコリを払って回る。
床に落ちたホコリは後でほうきで集めて、最後に雑巾がけをすれば完了だ。
シズ子が備品の買い出しに出かけて、小波も荷物持ちで駆り出されたため、部屋にいるのは留守番のコガネだけ。
ただ待っててもヒマなので、自分から部屋の掃除を始めた次第。
「けどそんなに汚れてねえな。きっとシズ子さんが、いつもちゃんと掃除してるんだろうな」
少なくとも小波ではない。昔桜亭の散らかり具合を思い返せば、彼に掃除の能力がないのはコガネにも一瞬でわかった。
「せっかく雇ってもらったんだし、配達以外でも役に立てるように頑張るぞっ」
気合いの入るコガネ。はたきを振るう手にも力がこもる。
そこへ入ってきた一人の男。
「……どなた?」
男は小波よりも年上だが、まだ青年といってもいい風貌。二十歳前後というところか。
羽織袴に下駄という典型的な和装で、上に羽織るのは小波が配達の際に着るのと同じ外套。
ということは関係者か。コガネがそう思った矢先。
「……!」
男は下駄を大きく踏みこんで、コガネへ向かって跳躍した。
「!?」
ふいに放たれた肘打ちを、横っ飛びにかわす。
すれ違いざまにはたきで男の腕を打つが、軽いはたきでの一撃は有効打にならない。
男はそのままコガネの背後に回ると、手を伸ばして――




