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#二十三 切裂惹狗(三)

 油断した小波に飛びかかった切裂惹狗は、勢いのままに押し倒す。


 煉瓦の破片を全身に受けて、ずたずたに裂かれた身はあちこちで筋繊維や骨が露出し、顔も誰だか判別できない有様。


 ただ恨みと殺意だけが惹狗を衝き動かす。


「しぃねぇぇぇぇ」


 心臓目がけて匕首を振り下ろそうとする惹狗に、小波はその腕を掴んで抵抗する。


 身を守るためには当然だが、この体勢では御伽創死が撃てない。


「くそっ」


 倒れた拍子に後頭部を打ったのか、小波の動きは鈍い。このままだと、いずれ押し負けるのは時間の問題。そこに。


「アニキから離れろこの野郎!」


 わめきながらコガネのぶん投げた立て看板が、惹狗の頭を直撃。どんがらがっしゃと音を立てて砕け散る。


「あがぁぁぁ」


 惹狗は血みどろの顔をコガネに向けて、小波から離れる。だがそれは、コガネが新たな標的になったということ。


「え、あ、いやその、アニキから離れろとは言ったけど、誰もこっちに来いとは言ってないワケで」


 コガネは惹狗が最初に投げた匕首を拾ってぶんぶん振って見せるが、腰の引けた姿勢でそんなことをしても威嚇にならない。


「馬鹿、早く逃げろ!」


「こぉろぉぉぉすぅぅぅ」


 看板の残骸が散らばる中で身を起こした小波が叫ぶ。惹狗はじりじりと距離を詰めるが、コガネは逃げようとしない。


 そして匕首の切先をコガネに向けたまま、惹狗が一気に飛びかかる!


「ひゃい!」


 刃先が触れるギリギリのところで、コガネがすとんとその場にしゃがみこむ。


 その後ろに立つのは、瓦斯燈の鉄柱。


「ごあっ!?」

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