#二十二 切裂惹狗(二)
切裂惹狗は匕首の切先を小波へ向けて、勢いよく跳躍する。
狙いを定める余裕がないと判断したのか、小波は惹狗ではなくその真下に銃口を向けた。
「馬鹿め、どこを狙って――」
ドガァッ!!
放たれた銃弾が、足下の煉瓦を砕く。
すると、その破片が無数の刃となって上にいる惹狗へ向けて撒き上がる!
「御伽創死――牢途走者」
「があああああぁっ!」
四肢を、臓腑を、頭を煉瓦の砕片に穿たれ、失速した惹狗は小波までたどり着くことなく穴の中へ落ちる。
「自分が刻まれた気分はどうだ」
「……」
穴の上から小波が声をかけるが、返事はない。
おそるおそる後ろから出てきたコガネが、惨状を目の当たりにして声を漏らす。
「あーあー、どうするんだよアニキ。地面にこんなでっかい穴あけちゃって」
「い、いいんだよこれは! 後で修理してもらうから!」
コガネの指摘を受けて、若干キレ気味に叫ぶ小波。必要以上に声が大きくなるのは、やりすぎの自覚があるからなのか。
「それより、オイラ何もしてないんだけど。いいのか?」
コガネが役に立つかどうかを見極めるための配達なのに、小波だけで解決させたら意味がない。
「あ、忘れてた」
「おい!」
「じゃあとどめでも刺すか? でっかい石か何かぶつけて、頭をつぶせば死ぬだろ」
「無駄に残酷だよ!」
元より人間を化かしはしても、危害はめったに加えない貉だけあって、荒事は得意ではない模様。
「しょうがねえな。役に立ったことにして、後で口裏合わせようぜ」
「ごめん……」
コガネが釈然としない口調でつぶやく一方、小波は穴の底へ視線を向ける。すると。
「ころぉぉぉぉぉぉすぅぅぅぅ」
血みどろになった惹狗が、匕首を手に小波へ飛びかかる。
「!」




