#十六 郵便局分室(三)
「……」
女の子って言われた途端、それまで緊張しまくってたコガネが顔を真っ赤にして黙りこむ。
小波はその様子とシズ子とを交互に見比べてから、最終的にシズ子に顔を向けた。
「いやいやいやシズ子さん、その冗談は難しすぎて笑えませんよ」
「冗談なんて言っていないけど」
真顔のシズ子に、小波はさらに「いやいやいや」と続ける。
「だって、こいつのどこが女の子なんですか。いくら子供だからって、胸なんか真っ平だし。これは誰がどう見たって男としか――」
「アニキ」
後ろから声をかけられて、振り向いた小波の腹をコガネが拳で一撃。
「ぐはっ」
「それ以上言ったら、たとえアニキでもぶん殴る」
「殴ってから言うなよ……」
床にうずくまってうめく小波に、シズ子がさらに追い討ち。
「巌谷くんって、本当に最低ね」
「だってそんな格好してたら、誰だって男だと思うじゃねえか。胸がありゃ話は別だろうが」
げしげし。
「たとえアニキでも蹴る!」
「だから蹴る前に言えよ!」
小波が逆ギレ気味に立ち上がると、コガネはその顔を睨みつける。
「母さんが死ぬとき、人間に化けるときは変なことされないように、男の子の格好にしなさいって言い残したんだよ」
「ほら見ろ、だったら俺が男だと間違えたってちっともおかしくねえだろうが」
「そうだけど!」
声を荒らげるコガネの見る前で、小波の後頭部にシズ子が一撃。
「巌谷くんはデリカシーがなさすぎ」
「すみません……」
右手で頭、左手で腹を押さえた奇妙な踊りみたいな姿勢でつぶやく小波。




