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#十二 昔桜亭(一)

 コガネはその後もしばらく泣き続け、ようやく落ち着いた頃にはまた雲も晴れて、池のほとりに月明かり。


 幸い途中に人通りもなく、通報を免れた小波はスンスンと鼻を鳴らすコガネに釈明する。


「だって、コガネを殺す理由がねえだろうが。討伐状だって投函されてないのに」


「オイラそんな仕組み知らないもん」


 すねるコガネ。実際には、人肉を食べたと聞いただけで吐きそうになる小物の討伐が必要になるとは考え難いが、当のコガネにそれを知る術はない。


「この後どうするつもりだ。帰るところはあるのか」


「いつもは公園の中で寝てる。この辺は木が多いから」


「けど、寒いだろ。あんな目に遭った直後じゃ怖いだろうし」


「うん、まあ」


 コガネがした怖い思いの半分くらいは小波のせいだけど、本人に向かって言えるはずもない。


「俺んとこに泊まるか?」


「えっ、いいの?」


 コガネだって好きこのんで公園で寝てるわけではない。壁と屋根のある場所で寝られるなら、そうしたいと思うのは当然のところ。


 不安も多少あったものの、あんな目に遭った後でひとりきりで寝る心細さに耐えかねて、小波について行くことにした。


 不忍池から少し歩いてたどり着いた小波の部屋。昔桜亭せきおうていなんて小波は呼ぶが、ごく普通に建てられた長屋の一間である。


 その昔桜亭に帰って早々、小波はコガネに告げた。


「よし、脱げ」


「ええっ!?」

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