#十一 御伽創死(三)
自身に向けられた銃口を見上げつつ、コガネは尋ねる。
「ア、アニキ? 今度は何の冗談だよ」
「悪く思うなよコガネ。臣民の害になる怪は排除するのが明磁政府の方針だ。俺ら特命配達員は、そのために組織された特殊部隊なんだよ」
淡々と告げる小波の顔に笑みはない。その顔と銃口を交互に見比べて、コガネが声を震わせる。
「でも、でも……」
「心配すんな、すぐ楽にしてやる。だらだらと長引かせるのは、俺も好きじゃないんだ……、よっと」
言いながら、左足を軸にして反転。躊躇なく引き金を引いた。
ぱぁん。
乾いた音と共に放たれた銃弾が、池から這い出て小波の後ろへ迫り来つつあった幼粘鬼の腹部に炸裂。
「だばぁー」
その途端、半透明の身体は嘔吐のような音で悲鳴を発しながら急速に濁り行き、人の形をとどめない汚泥の塊へと変じる。
やがてその姿も乾燥してひび割れ、風に吹かれて霧消した。
「御伽創死――、泥附落伍だ」
幼粘鬼が完全に消失し、銃身が冷えたのを確認してから、小波は御伽創死を懐に戻す。
代わりに先程の便箋を取り出して、討伐した証拠に消印を押した。
「いやー、コガネが派手に脅えてくれたから、うまいこと向こうの気を逸らせた。ナイス演技」
コガネに向けて、いいね! とばかりにグッと親指を立てる小波。
それを見て脱力したのか、すでに腰の抜けたコガネはさらにがくんと肩を落とした。
と思いきや、すぐに顔を上げて小波を睨みつける。
「うわああああん、アニキの馬鹿バカ莫迦! ホントに怖かったんだからああああ!」
「え? え?」
いきなり泣き出したコガネに、今度は小波が驚く番。
「いや、いったん落ち着こう? こんな状態で誰か通りかかったら、俺が変なことしたみたいになるから」
「うわああああん!!」




