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#十 御伽創死(二)

 幼粘鬼は池の上に浮いたまま、ゆっくりと小波へ近づく。


「やめろ、アニキに何するつもりだ!」


 コガネが叫んでも、影響力は皆無。


「たはー、そぉんなのきまてるでいす。こーいつのくぅびをがぶがぶしてい、ぶらぁどをぴゅっぴゅさせちゃーうでいす」


 そう答える幼粘鬼の口には、いつの間にか牙めいた犬歯が見える。その歯で小波の首筋に噛みついて、頸動脈を食い破るつもりか。


 ゆっくりと、だが着実に小波との距離を詰める幼粘鬼。やがて池を出て地面へ下りようかとする刹那。


 ばちゅ。


 鈍い水音を立てて、幼粘鬼の頭部が弾ける。


「へ?」


 コガネが驚きの声をあげたのとほぼ同じくして、力を失った身体が池に落ちてざんぶと水しぶきを上げる。


 何事かと思ったコガネだが、小波の構えた銃から上る煙に気付く。


御伽創死おとぎそうし――、泡沫崩壊ばぶるほうかいだ」


 小波の全身を覆った泡が力を失い、足下にずるずるとはがれ落ちる。


「おと、ぎ……?」


「この銃の名前だ」


 手に持った銃を示す小波。通常の短銃よりも銃身が太く大ぶりだが、日常に銃を見る機会がないコガネにその違いまではわからない。


「撃ち出された銃弾が対象を縦断する際に内包する言語を絨毯化させて、終端の集団が柔軟に――」


「??? アニキ、そいつはどこの国の言葉だい」


「あー、気にするな。俺も受け売りだから、意味はちゃんとわかってねえ。それに」


 ちゃき。


 撃鉄が起こされる。


「ここで死ぬおまえには関係のないことだ」


 銃口がコガネに向けられた。


「……え?」

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