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噛み付いてくる足跡

ナツメグです!


4話ですね!今回は進展はあまりないので、休憩と同時に、次への目処を立てるといったようなパートになります!


ちょっとした補足回にもなっていますので、地の文もお楽しみいただければ、と考えております。


5話の投稿は早くなると思います!

ぜひ付いてきてくださいね!

「開店って、どうやったらいいんでしょう?」


「あんたアホの子とか言われたことない?」



質問に質問で返すように見えるが、シオンの反応も已む無しといったところだ。



「はへ?」


「いやその…夢だったんでしょう?宛もなく魔法に明け暮れて、ようやっと叶いそうな夢なら下調べくらい…」



そう、シエルには予備知識などというものは無いも等しかった。


厳しい生活の中で生き抜いて、鍛え抜いた魔法を利用しなんとか資金をかき集め、いざ開店というところまで来て、



「いやでも…誰も教えてくれませんし…」


「あぁ…」



やはりこの世界の醜い部分が、最後まで尾を引いてしまっていた。



「(そりゃそうよね…こんなご時世じゃ都合のいいハウツー本も無いんでしょうし…)」



人間も人間で必死だった。


きっと、少しでも経済を回そうと各々が考えて起業したのだろう。




「というか、それならますます、どうして異界の人間なんか呼ん………えっ、あっ」


「はい!そうなんですよシオンさん!」


「ごめん待って」


「なんにも分かんないのでお助けが欲しかったのです!」


「聞きたくなかった…」




結局のところ、世界史レベルの秘術を用いてまでシオンを呼び出した理由とは、共に店を経営する仲間…そして、異界の知識を求めたからなのであった。



しかし、



「…そもそも、別の世界の人間なんか呼び出して大丈夫なものなの…?」



確かに、シオンの世界であっても、やれ大予言だのやれ未来人だのと、世間を大騒がせする人間はいた。


いたが…



「魔法やら次元やらなんてトンデモ知識が確立されちゃってるんですし、今更そんなに問題にはなりませんよ」


「はぁ…」



いたが、決まってそれらの人間の大半は胡散臭い眉唾として半笑いで蹴飛ばされるものだった。


そうでなくとも、この世界には少なくとも次元越えを果たした人間が居たのだし、シエルの実力自体も知れ渡っているのだから、多少不思議がられる程度なのだろう。




「そんなこと言ってもね…私もただの瀕死拒食不良学生だったわけで…」


「すごそう!」


「言葉が通じても意味が通じていない…」



ちなみに言葉が通じるのもシエルの魔法であり、所謂テレパシーに近いものらしい。


ただ話している本人は本来の言語を話している、または聞いているという、平時に近い感覚で会話できるのが、最上級魔術師による実力です!…ということのようだ。



ただ魔法の主導はあくまでもシエルなので、




「んもー、それにしたってなにか出来なかったの?魔法の力でお店をボンっ!とか!」


「あれれー?不思議!何を言っているのかわかりませんネー!」


「ぐぎぎぎ…」



都合が悪いと逃げられてしまうのであった。



「と、とはいえ、まずは何から始めたらいいのか分かんなくて…シオンさんの助けが必要でして…」


「そうね…」




シオンは必死に頭を巡らせる。


何をすべきなのか?


最優先事項はどれか?




…店の建築?

いや、それは問題ない、住居と店舗が一体となっているだけで、今シオンがいるここが店となる予定のようだ。



…用具の仕入れ?

それも必要だ、だが技術が衰退したとはいえ、弁当の容器などであっても最低限のものは簡単に用意できるだけの設備はあるらしい。一旦保留だ。



…材料の調達?

いいや、近くには食料を購入できる店舗も数多くあるし、何より何処かとキッチリ契約を結んだりするのはまだ難しいだろう、資金面でも、それ以外でも。





「…っそうだ!」


まず何よりも必要なことがあるではないか。



だがシオンの思考がそこに行き着いた時、彼女の表情は確かに険しくなった。




「な、なんでしょう?」




長考の果てに辿りついたそこはおそらく最初の難関。


上手く事が運ぶ見込みはほとんどない。

だが、実行できなくては、



夢は夢のままだ。




ため息混じりに、やれやれとシオンは告げる。



「…店を開くっていうのにはね、どうしてもまず許可が必要になるの、国やら自治体やらのね」



「…!そ、それって…」




この場合。



ガルバンディア国の首都であり、自治を取り仕切る本部があるここの場合。





つまりは、国に頭を下げるとほぼ同義。



一度、正面切って突き放した相手に。






「厳しくなるわよ」


「…覚悟はできています」





とてもタダでは済まされない。


向こうも立場があるので、理不尽に無理と言うことは無いだろうが、何らかの困難な条件がつくのは明白。



「…………」



ただ、それでも、




「…一人じゃないからね」


「あ…」




何も、一人で背負わせるつもりなど毛頭ない。


シオンはもう仲間なのだ。友なのだ。




だから、



「私にもきっと、できることがあるから」



暗い部屋から無理にでも連れ出してくれた、大切なシエルのために。




「…はいっ!」



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