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奮闘の陰に潜む



やっべドラクエビルダーズ楽しすぎて新世界樹2

始められないんですけど!



どうもナツメグです。



更新ペースですが、基本的にこのくらいで安定させていこうかなと思います。


挿絵も最近無いですが、今シオンのイラストを描いているので、完成したらチラっと公開しようと思います!

後書き前書きでもイラストって載せれるんでしょうかね?



それじゃあ13話、いっきまーす!(アルル並感)



一番乗りは三馬鹿リーダーオッサン冒険者だった。




「ようシオンちゃん、シエルちゃん!予約してた弁当10個貰えるか?」


「あんたどこにそんな金あんのよ…」


「貯蓄は基本」


「思いの外堅実なんですよねこの人…」




ギルド前のスペースを借りての販売。


相手が馴染みの冒険者たちということもあって、ここでの売れ行きは好調だった。



三馬鹿自身も予約を入れてくれたおかげもあってか、用意してきた弁当の6割程がここで売れたのだった。




「うーんやっぱりしばらくは冒険者連中が資金源になりそうね…」


「お、お客様っていう立ち位置をスキップしてダイレクトに人間を金額換算しようとするのやめませんか?!」




とはいっても、アルシエルという名のブランド性、獣人への理解含め、最もアテになるのは事実として冒険者だった。




“お客様は神様”


とはシオンの世界ではよく言ったものだが、実際売る側の人間となってみればその言葉のなんと的確で重いことか。




「神は一人です!異端者は審問会にかけられ罪を罰せられる!たとえそれが異界人や大魔術師であっても例外は…!!」


「逃げろシオンちゃんたち!こいつキツめの聖職者だから!ゴッド系のワードはヤバいやつだから!!」


「「ひぃいいいい!!!」」




本当にヤバめなので慌てて退散した。







「次!」


「はい!」







王城からも程近く、役場や衛生管理局本部といった、お固い施設の立ち並ぶ、ガルバンディア国中心部のさらにド真ん中。



「い、如何ですかー!」


「どうぞお立ち寄りくださいー!」




こういった場での出張販売が珍しいのか、休憩中の役人などが少しずつ集まる。


シエルの顔を見て驚く者、しかめっ面になる者、反応は様々だ。




「予約をしていた者ですが、お弁当をいただけるでしょうか」




そんな中、一人の男性が予約票を差し出す。


聞き覚えのある声、けれど以前よりも柔らかくなったその声。




「…あ…!役場の…!」


「…その説は、お世話になりました」



ぺこりと頭を下げる男性。


彼なりに悩むところはあったのだろう、前に見た時より多少疲れの色が顔に出ていた。



だが、それでもその微笑みだけは、印象作りのための顔でもなく、仕事用の張り付いた仮面でもなく、本物の彼の笑顔だと見て取れる。




「もう獣人に挑戦的なこと言ってないでしょうね?」


「はは、さすがに先日の一件で分を弁えましたよ」




意地悪く問いかけるシオンに、優しく応じる男性。


何かが吹っ切れたのか、スッキリとした壮観な顔つきをしている。




「都合のいい奴と思われても仕方ありませんが…本当に感謝しています」




兄の消息不明を契機として抱いた僅かな獣人への嫌気、それを正しくないと知りながらも捨てきれない自身への迷い、


そして、騙すようにしてまでシエルを動かした、自らの手法への嫌悪。



彼の中でどのような葛藤があったのかは、筆舌に尽くし難いことだろう。




「いいんですよ、考え直していただけたなら…あなたが変われたから、私たちも頑張ろうって思えたんです…どうぞ」


「…あったかいですね」


「お弁当がですか?」


「…お弁当も、です」




彼は今度こそ道を違わず、矛先を間違えることなく、実直に進んでいくだろう。


その姿が、二人の可能性、二人の希望の象徴にもなる。




手を振る彼の背中に、人の持つ温もりを感じるのだった。







「あぁぁ!!し、シエルさ゛ん゛っ!!おおお、お弁当ぅぅ!手作りのぉぉ、おべ、お弁当ぅぅ!!」



熱烈なファンである衛生局員には買うだけ買ってもらって早々にお帰り頂いた。







「次!」


「はい!」







「お…お弁当いかがですかー!」


「見ていってくださいー!どうぞー!」




人々の活動の中心地となる商業区、中央広場。


二人と同じように客引きをする者、噴水の(へり)に座ってジャンクな間食を満悦する者、待ち合わせがあるのか立ち止まって辺りをキョロキョロ見回す者…



首都の人々は、とにかくこの中央広場に集まる傾向にある。




数多く立ち並ぶ露天や屋台、徒歩10分もすれば大規模な集合住宅街もあるためか、何かあれば「とりあえず中央広場に行こう」と気軽に訪れることの出来る、ホーム的存在。


若者から老人、冒険者に遊び人、帰宅中の出稼ぎ労働者、休憩時間の店員にと誰彼問わず人々が集まる。




時刻は昼前、本来であれば売上のピークとなってもおかしくはないはずだ。


本来であれば。




「…………」


「…そこのアンタ、見るならメニュー表にしてくんない?」


「……チッ」




視線は冷たい。


当然ながら、獣人の営むぽっと出の弁当屋など、民間人にはそうそう受け入れられはしない。




「…………」


「はいはいそこのオッサン!ウチの店長が可愛いのはわかるけどジロジロ見んな!」


「……魔物なんぞがいっちょ前に……」


「………!」




シエルは、それでも堪えていた。


睨まれ、蔑まれ、罵声を浴びようとも、獣人の意思を伝えたい。



私たちは、敵じゃない。




「くっだらないこと言ってないで弁当を見ろ弁当をー!ほら見てってー!」




シオンは、それでも拳を握らなかった。


誰かのためになる暴力などない。

ここで以前の二の舞になれば、シエルは尚のこと追い込まれる。




「ど、どうぞご覧くださいー!」


「おいしいわよー!是非どうぞー!」




負けはしない。


世間に抗うとは、そういうことなのだ。



折れた方が、負けだ。







結局この日、中央広場で売れた弁当は片手で数える程も無かった。


予想の範疇と言えばそうではあるが、なかなかどうして心に重く響く、初日の一期一会の闘い。





「…まぁ、こんなもんよね」


「が、頑張りはしましたよね…?」




とにかく粘り強く、続けるしかない。




今はまだ手探りのシオンとシエル。



焦って近道を探すことでも、能天気に惰性で続けることでもなく、


何が正しいのか、その答えはまだ遠い。












「どうしたらいいのかしらねー…」


「やっぱり、粘り強く誠意を示すのが一番じゃないですかね…」




午後の店頭販売を終え、夕餉の席。


シオンも料理のできないことはないが、シエルの腕には敵わない。



料理当番においては自然と、シエルが主になるのだという不文法が成立していた。




「今日は、餃子でーす」


「うーん知ってる料理が出るあたり、一時は本当に私たちの世界くらいの発展もあったのね…」


「料理に関しては彼の大魔術師の手記よりも人の記憶の方が役立ったようですね」




メカメカしく作られた工場製品、自動生産ラインの組まれる大量生産のお菓子のように、装置それ自体が必要となるものでない家庭料理。


その味、そのレシピは、人々の心に染みついていた。




「この世界観でハンバーガー売ってる屋台見た時はぶったまげたわよ…」


「はは…まぁハンバーガーはそんなに複雑ではありませんしね」



皿に並ぶ餃子は羽まで黄金色に輝いている。


大陸や海洋の作りまで丸々異なっているこの異世界で、中華という位置づけなどは存在しないものの、シオンが頬張ったそれは、よく知る中華料理の餃子に違いない。




「こんなに…ウップ…シエルの料理おいしいのにね…ウッ」


「シオンさん」


「ん、うっ?」


「嬉しいですけど説得力ないです」




しょうがないでしょこっちは一口一口が吐くか吐かないかのせめぎあいなんだから!


という反論は、口にモノを含んで喋ってはならないというマナーの神からの啓示のようにして溢れ出た肉汁が許さなかった。





「あ゛っっっち゛!!」












「いらっしゃいませー!」


「どうぞどうぞー!」



今日も見えない人の心に悪戦苦闘しながら、一期一会の旗が虚しくたなびく。



「なかなか来ないわね…」


「粘りです…粘りですよ、シオンさんっ」




一期一会のお弁当、どうぞ!

と、虚勢を張った元気な声が、二人を一瞥する人々の気持ちを具現したような乾いた風に乗って響く。




「んー時間か…」


「午後の営業もありますし…今日は引き上げましょうか」




なにも顧客を民間人に限定しているわけではない。


少ないながらも、一期一会の弁当には需要が確かに存在している。



それを疎かにするわけにもいかず、午後の店頭販売に戻ろうと店仕舞い。




そのとき、シオンの視界がその端に、




「…………」




小さな、子供を捉えた。






「………?」



シオンはその少年に見覚えはない。


彼が一言でも声をかけてきたなら記憶の根底から何かを引き揚げられたかもしれないが、少なくとも見た感じでは、知らない顔だった。




少年はこちらを見ていた。


切り取れば不気味なホラーシーンにも見えたかもしれないが、彼は最後にニヤリと笑って去っていった。



そして、




「あ…っ!」




彼には、尻尾があった。


動物のような、



尻尾が。





「シオンさん?どうかしました?」


「…いえ、なんでもないわ」




獣人自体は珍しいものではない。


中央広場で見かけることこそ少ないが、首都に住んでいる獣人がいないわけではないし、シエルのように隠している者も多い。




しかし、何となく気になった。


それは、不思議な彼がまだ幼さを残す少年だからか、はたまた、何か超自然的直感が働いたためか。




「…なんでも」


「…??」




いずれにせよ、見当さえつかないことを言い漏らして不安を煽る必要も無い。


今は忘れることにした。




彼が何者なのか、どうして二人を見ていたのか。


全てが謎のままであるのは気持ちの悪いことではあったが、だからといって面倒事は尚更御免だ。






「さーて、帰りましょうかね」


「まだお仕事はありますよ?」


「だっ、わ、わぁーってるわよ」




ガラガラと音を立て弁当を運ぶリヤカー。


シオンとシエルは、まだ何も知らない。




これから一期一会がどのような道を辿っていくのかということも、



その背に託された獣人の思いも、










「…アルシエル」









彼女達を見ていたのは、一人ではなかったということも。









「…………フン」

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