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恋愛敗者復活戦

作者: 二六 尚希

こんにちは、恋愛ものを書いて見ました!


甘酸っぱい青春もののつもりです!


どうぞ!

「瀬田くんって好きな人いる? 私は瀬田くんのこと好きだなー」


 小学生の時に言われた言葉。

 冗談に決まっているのだろうけど、未だ鮮明に僕の記憶に残っている言葉。

 きっとそれは「小学生の時の記憶」としてずっと残っていくのだろう。





 「ごめん、私好きな人出来たから」


 

 踏ん張りようのない既に関係が終わっていることを告げられるのはよくあること。

 

 高校生になった今。

 青春真っ盛りの今。

 僕らの関係は空を流れる雲のように、緩やかに、いつの間にか変化していく。



「うん。大丈夫。こっちこそごめんな」



 精一杯の笑顔を作ってその場をなんとか暗い雰囲気にならないように頑張る。

 それにしても今回は分が悪かった。

 クラスメイトはほとんどいるし、既に女子の間では決まっていたことらしい。



「おいおい、気にすんなよー。あんなやつより良い女の子はいっぱいいるって!」

「そうそう。お前みたいな良いやつにはもったいなかったよ」


「まぁお前は自分からいかないからなー。もっと積極的になんないの?」

「頑張ってみる」

「お? 言ったな! みんな瀬田が本気だすってよー!」



 消極的。

 確かにその通りかもしれない。

 いや、その通りだ。


 友達として話す分には全然問題なく話せるけれど、いざ付き合ってみるとなにもできない。

 どうすればいいのかわからない。

 積極的とかガンガン行くとか。

 何を?

 どうすれば?

 いいんだろう。


「ってことはお前、そいつのこと好きじゃなかったな。それか別に好きな人がいるか」


 一度そんな風に言われたことがあった。

 そんなことを言われて考えてみると、好きってなんだろう。付き合うってなんなんだろうってなる。

 答えが出たことなんてなかった。



「おーい、落ち込んでる瀬田のためにみんなでメシおごることになったから帰りにファミレスでも行こーぜ」

「ありがとな」


「何いってんだよ、『敗者復活戦』のためだろ?」

「えぇー……」


「好きな子とかいないの? すぐに告白すんのは周りの目があるだろうから今は下地を固めなくちゃな」

「好きな人なんて……」



 そう聞かれると真っ先に思い出してしまうのが、小学生の頃のあの言葉だった。

 思い出に恋してるとか残念なやつだと思われたくないからずっと否定してきたけれど、いい加減否定じゃなくて忘れなきゃいけないんだ。



「じゃあ駅前のとこなー」



 終業のベルと同時にエナメルバッグを肩にかけた男子生徒が部活やらバイトやらに飛び出していく。

 女子たちは遅くまで教室に残っていつも何かしているみたいだ。


 僕たちのグループもいつもならゆっくり帰るけれど今日はファミレスに行くからとみんな急いだ。

 

 駐輪場に停めていた自転車のスタンドを蹴り、ブルーな気持ちを吹き飛ばすようにペダルを踏んだ。





「いらっしゃいま――――ぁ……」


「あ……」



 いつもは行かないファミレスに行って自動ドアをくぐったと同時に僕の敗者復活戦のゴングは鳴り響いた。

 

 予想もしないタイミングで背中を押されたような気分だった。



「瀬田くん……だよね? 元気にしてた?」



 そのレジスタッフの声には聞き覚えがあった。

 あの声だ。


「う、うん。そっちこそ調子は……どうですか?」

「元気元気! なんで敬語なのー、仲良かったじゃない」



 僕の後ろで友人たちは、レジスタッフの女の子が誰なのか気になって仕方がないようでひそひそと話し合っている。



「とりあえず席に案内するね、六名様でーす」



 角にあるそこだけ少し区切られたようになっている席へ通されたのは男たち盛り上がっても多少大丈夫な席だからだろう。


 その女の子は六人分の水を持ってくると友人たちの質問攻めにあった。



「あの、あなたは誰なんですか!?」

「瀬田の元カノですか!」

「名前は何て言うんですか?」

「どこの高校ですか!」

「今彼氏いますか!?」


「うぅ……えぇーと……」


「みんな、やめろよ。困ってるだろ!」



 僕は柄にもなく、といえば正解。

 柄にもなく声を荒げた。

 友人たちはそれはそれで衝撃だったらしく一気に静まってしまった。



「名前は加賀(かが)深雪(みゆき)と言います。瀬田くんの小学生の時の同級生です。それ以外はなにもありま……せん。失礼します!」



 困ったように名前だけ名乗って加賀は奥へと引っ込んだ。

 それはまあ――――当たり前だと思う。

 

 そしてそのあと困るのは僕も同じで。



「加賀さんってお前の何? 結構可愛かったじゃん!」

「え、え、いいなーいいなー!」


「もしかしてお前ずっと加賀さんのことが好きだったんじゃないの?」


「え……?」


「だってお前が声荒げるなんて珍しいだろ。俺からはそう見えたんだけど」



「多分、そうだ……と思う。ずっと昔遊んだときのことを覚えてるんだよ。好きな人を聞かれたときに真っ先に思い浮かぶのもあの子なんだ」


「それ確実じゃん! おーし、決まった! 今から作戦会議だな!」



 とりあえずみんなで色々注文をしてから作戦会議が始まったんだけど、注文を取りに来たのは加賀じゃなかった。

 

 僕は加賀が今どうしているのか、何故か無性に気になった。





「よーし! 俺らは先に帰る。で、お前と加賀さんだけになる。んでとりあえず連絡先を聞くんだ。できれば今度遊ぶ約束までしとけ、いいな?」


「うん」


「この作戦はお前だけにしかできない。俺らが手伝うことも出来ない。幸運を祈る」


「大袈裟な……」



 こうして友人たちはこそこそと金だけ置いてファミレスを出ていき、僕と加賀の二人きりの場がセッティングされた。


 友人たちが出ていったのを知れば加賀が現れると言う算段だ。


 僕は会計をするために伝票を持ってレジへと向かう。

 手は震えるし足は進まないし。


 頭のなかで言おうと思っていることはめちゃくちゃになった。



「か、会計を……」


「はーい」



 予想通りレジへとやってきたのは加賀だった。



「友達は帰ったんだね、賑やかだねー」



 どこからかしっかりと見ていたようだ。



「え、えと」


「ん? 何?」


「いや、なんでもない!」


「そう? はいお会計は―――――」



 僕は言えなかった。

 逃げた。

 仲間にあれだけ背中を押されて良い状況、加賀と出会えたのも奇跡に近い。


 家からここまでの距離は結構離れているし、もしかするともう会えないかも知れない。


 それなのに言えなかった。



「あ、あの」


「あ、そうそう。電話番号教えてよ。それから今度また遊ばない? 昔みたいにさ」


「え、あ、うん!」



 会計を終え、僕は加賀が胸ポケットから取り出したメモ帳に自分の電話番号をできるだけ丁寧に書き、渡した。



「なんで緊張してるのよー。変わったねー」


「加賀は変わってない……かな?」


「あっれー? 昔は深雪ちゃんって呼ばれてたのになー。残念だなー」


「声大きいよ!」


「ごめんごめん。じゃ私まだバイトだから終わったら電話するね」


「うん」



 そう言って僕に手を振った加賀はレジの奥へと姿を消した。


 そして僕は僕で逃げるようにそのファミレスを後にした。


 外ではやっぱりみんながにやにやしながら待っていて、どうだっかの質問攻めにあった。



「敗者復活戦は―――――とりあえずミッションはクリアした!」


「おぉ! 瀬田にしては十分じゃん!」



 僕からはなにもしてないんだけど、とは言わなかった。


 僕の敗者復活戦はこれからが本番だ。


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