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神とクズ  作者: 葉月
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8

ステンドグラスの張り巡らせられている、礼拝堂。バツの印があちらこちらに書かれている。

ニセとウラーが長椅子の一つに座っていた。

ニセは腕を組んで上を見ていたが対象的にウラーは俯いていた。

二人は、真剣な顔をして何かを考えているようにも見える。


「ウラー。彼らをどう思いますか?」


ニセはウラーの顔を見ることなく呟いた。


「……」


「私より、ウラーの方が鼻が聞きますよね?」


「……女性の方は…何の匂いもしないけど…二人は血の匂いがしました。一人や二人殺した程度では染みつかない…何十人も殺した事がある…と思います」


ウラーの言葉を聞きニセは、上を向いたまま苦い顔をした。

大きくため息をつくとニセは、何か決心したような顔になった。


「しょうがない…ここは、先手を打ちましょう。あの、二人にタカラを付けといてください。しぃさんの方は……ウラー。あなたがやって下さい」


ニセの言葉に今まで反応の鈍かったウラーの耳がピクリと動いた。

少しの間の後コクリと小さく頷いた。




今日も憎たらしいほどの晴天。

こんなに良い日なのにどうして俺らは、こんなところにいるんだろうか…。

俺は教会の中の長椅子に座りニセの長い話を眠り半分で聞いていたら、隣にいるモララーに起こされてしまった。

右にはモララー、左にはしぃ、なにこれ逃げ場ねぇじゃん。


「なぁ、しぃ」


「……何よ?」


こちらを見ることなく返事をする。

教会の中にはたくさんの人間信仰者がいるため、あまり大声では話せない。

ようするに、これはミサみたいなものだろう。


「眠くね?」


「眠いけど…ここで寝たらバレるでしょ」


しぃだけは、仲間だと信じてたのに…。

俺は少しだけ絶望に打ちひしがれた。

そんなことをしているうちに、教会の鐘がゴーンとなった。

ミサの終わりを告げる鐘だ。


「おや。もうこんな時間ですか。では、今回のミサはこれで終わりです。また来週」


ニセの言葉に人間信仰者は、ぞろぞろと教会を出て行った。

教会に残ったのは俺ら三人と、ニセ、ウラー、タカラだけだった。

ウラーが、無言で近づいて来るとしぃの横に立って腕を引っ張った。


「え?ちょ?」


「話…あるから。二人は、タカラにでも…教会案内してもらうと、良い」


「え?じゃ、じゃあ、二人ともまた後でー」


二人はニセの元で何か話していた。

俺らは、やることがなく呆然と立ち尽くしていたが、タカラの元気そうな声に我にかえった。


「お二人さーん!ウラーさんに聞きましたよ。この中、案内して欲しいんですよね?」


「え…いや…俺そんなこと…」


「任して下さい!あ!でも、あまり案内するところないですけど」


「…まぁ、案内してもらおうよ?ね?」


「…しょうがねーな」


俺とモララーは、先頭にいるタカラについていくためすこし急ぎ足で歩いた。

しぃ達からは、それなりに離れる事になってしまった。

礼拝堂から出るドアを開けると外に出るドアがある廊下に出た。

左に曲がり、階段を登り切った先には廊下があり、二部屋分の扉があった。


「ここの部屋は、ニセさんとウラーさんの部屋です。二人はここに住んでいるんですよ」


「ほぉー…」


「……そういえば、用事があったんだ。ねぇ、ギコ?」


「お?あ、おう!」


この後に用事なんて全くもってないが、どうやらモララーは一人になったしぃが心配なのか、それとも早くここを切り上げたいのか、分からないけどとにかく帰る事を望んでいるだろうから、俺も同意することにした。


「あ、そうですか」


タカラが、残念そうに呟いたのを聞くと俺らはくるりと半回転し、階段の方に体を向けた。

その時だった、殺気というか体制を変えた音というか、まぁそんな気がして振り向こうとした時、俺の右頬を銃弾が掠めた。

本当に空気が触れ合ったぐらいだから、血が出るとかそういうことはなかった。

どうやら、タカラが銃を撃つ瞬間にモララーが、銃を持っているタカラの右手を掴んだおかけで標準がずれたようだ。


「なんで、右手を狙った?」


モララーがいつもよりも低い声でタカラに尋ねる。

俺は頬をさすった。


「……」


「だんまり…ね。予想してあげるよ。ギコの右腕を撃って、利き手を使えなくする作戦でしょ?」


ギリギリと音がしそうなほどの力で右手を掴んでいる。

タカラは、あまりの力の強さに銃を地面に落としてしまった。


「残念だけど、人に銃を向けたりする時は常に急所を狙うことだね。特に君みたいな素人には、背中とか的の広い所を狙うべきだと思うよ?」


タカラの顔は般若のお面で見えないが、きっと苦痛にゆがんでいると思われる。

モララーがパッと手を離すと右手首を左手で押さえた。


「誰に言われた?」


素早い動作でタカラのこめかみに銃を当てる。

この動作を見てつくづく、敵に回さなくて良かったと安堵していた。


「……それを言っちゃあ。銃を向けた意味がないですよ」


「そう」


引き金をひこうとした時俺は焦って声をかけた。


「ちょちょっ!待て待て!殺すなよ!そいつ重要だろ!?」


「……コレ重要?」


ブンブンと縦に大きく何回も首を降ると、ため息をついて銃を下ろしたが、タカラの首に腕を回した。


「これなら良いでしょ?」


「…まぁ。それなら…」


首を押さえられた状態のタカラは、いきなり声を発した。


「良い事…教えてあげますよ。しぃさん。無事だと…良いでっ…ぅぐっ…」


言葉の途中でモララーが首を締めたのかタカラの言葉は、途中で途切れ苦しそうな声だけが聞こえる。


「おい…それは、どういう事だ?てめぇ」


「そうだねぇ。できれば早く教えて欲しいな」

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