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神とクズ  作者: 葉月
3/18

3

窓がガタガタと揺れている。窓から見える景色は、真っ暗で夜中と言う事がより強調された。

私は布団を頭まで被り、ガクガクと震えていた。

〈人間〉が来る恐怖に怯えていたのだ。

窓が揺れている理由は、〈人間〉と全く関係のない、風のせいなのだが、強い風の吹く夜は、母のことを思い出す。

私も母のようになってしまうのだろうか。

怖い。

怖い。

頭の中にその言葉だけが、並んで行く。

不意に、暗い部屋の外から声が聞こえた。


「ふ…ふふ…」


あぁ、私の馬鹿。


早く寝ないから。


「ふ…ふ…ふひゃ…ひゃ…けひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」


ーーーお願いします。

早く…朝になって下さい。


私の思いとは裏腹に、布団のそばの時計は二時二十分をさした。





「…なぁ…保護地域ってなんなんだよ」


地面が、コンクリートから乾いた土に変わり、周りの風景も先ほどまではコンクリートの塀があったのだが、今では木と木と木しかない。簡単に言うと森みたいな、所だろう。

空を見たくても、木についている葉で埋め尽くされているため、多少の木漏れ日が射し込むだけだった。


「君、ちゃんと勉強してた?」


「う…うるせぇな。学勉よりも、人の殺し方の方が多かったじゃねぇか」


「…本当に、僕と同じ学歴なのかな…。まぁ、いいや」


モララーは俺の一歩前を歩き自分の表情を俺に見せないような格好になった。たまたま、そうなったのかもしれないが、俺にはそう捉えられる。


「保護地域ってのは、別名差別地区みたいなものなんだよ」


「差別地区ぅ?」


「人にすら〈人間〉にすらなれない、悲しい存在だよ」


森を抜けると、そこには小さな村の様なものがあった。

レンガで作られた家が幾つもあり、畑が多くあることから、自給自足の生活を送っているのだろうかと、思われる。

村の中心あたりには大きめの井戸がある。


「人でいるには、少々不気味な力を入れる持っている。しかし、〈人間〉になるにも、姿が人の姿をしている。……この中間の存在だったら、ギコは…普通の人だったら、なんて思う?」


モララーは、両手を左右に広げくるりと、こちらを振り向く。


「……化け物…」


「そう。ここは、化け物が集まる村なんだよ」


奥の方にある家から、人が出てきたが俺らの姿を見るなり、目を丸くし恐怖によって強張った顔になった。

そして、持っていた荷物を落としそうになるほど、慌てて家の中に入って行った。


「…ここにくる、必要性は?」


「この村の中に、怪我を治せる人がいる。その人を探してきた」


「ちょ…ちょっと待て。あくまでもそれは、怪我だろ?病気は、治せるのかよ?」


「……正直わからない。

でも…。何もしないよりは、マシなんだろう?」


何か、挑むような視線を俺に送る。

俺は口の端をつりあげ、あたりまえだ、と口を開いた。

そんな俺の様子を見てモララーは、手前から三つ目の家にノックをした。

本当にここであってるのか?とか、確実に治せるんだろうか。とか、疑問はたくさんあるが、今はモララーを信じて見ることにした。

数秒間の沈黙のあと、一人の老婆がドアを開けた。


「……いらっしゃい。あの子なら、奥の部屋に居るよ」


ふてぶてしそうに、老婆は言うとドアを開けたまま家の中に戻って行った。

俺らは、老婆の後に着くように家の中に入ってく。

家の中は、少し狭いがそれなりに片付いていて、住みやすそうな部屋だった。

短い廊下を歩くと、ドアが右と左に一つづつあった。老婆は、左の部屋に入って行ったので、俺らは右のドアをノックした。


「どうぞ」


女性のものと思われる若い声がドア越しに聞こえる。


「おじゃまします」


モララーが、そう言ってから部屋に入ったので、俺も後につづいた。

部屋は、白を貴重とした、清潔感溢れる部屋だった。ベッドの上には二〜三つのぬいぐるみらしきものが置いてあり、タンスの上にも、若い女性と小さな女の子の写真とぬいぐるみが一つ置いてあった。

ベッドの脇の大きめの出窓に彼女は、腰掛けていた。


「いらっしゃい」


彼女は口に笑みを浮かべたまま、挨拶をした。

膝丈の淡い色のワンピースがとても似合っていた。彼女は、どちらかというと美人、というよりかわいい方の顔立ちだったが、どこかあどけなさがのこる。


「私は、しぃ・テリーヌ。この村で治癒魔法をよく使ってるわ」


「僕は、モラランダー・フォークス。あっちは、ギコ・ハニャーン。今回は、頼みがあって来たんだ」


俺が、彼女…しぃに見とれているうちに自己紹介が終わっていた。


「まぁ、頼みはだいたい予想つくけど…。とりあえず、そこに座って。何か飲み物を持ってくるわ」


しぃは、そう言うと出窓から飛び降りて部屋を出て行った。

モララーが、端の方で座るので俺も隣に座った。


「……話についていけないんだが…」


「…まだ、理解出来ないの?この村の人たちは皆、何かしら一つは魔法を使えるんだよ」


「……んな、ファンタジーな話があるもんだな」


「ちゃんと、勉強しないから…」


「そ!それとこれは、どうでもいいだろ!」


しぃが、テーブルに人数分の飲み物をおくと俺らの向かい側に座った。


「おばあちゃに、驚いたでしょ?おばあちゃん、未来予知の力があるの。と、言っても…十分後の出来事しかみれないし、好きな時にみれないから、あまり使えないんだけどね…」


まるで、自分の事を話すかのように照れ臭そうに力の話をする。


「そうなんだ。ーーいきなりで悪いんだけど…。本題に入っていいかな?」


「…いいわよ」


しぃも、さっきまでの顔と打って変わって真剣な表情に変わった。

モララーが簡単に今回の事を話すと、少し申し訳なさそうに首をふった。


「残念だけど…病気については、私の力は、意味ないの…」


「…そうか。無理を言ったね」


諦めて帰ろうとすると、まって、と引き止めた。


「力は使えないけど…知識は、あるわよ」


しぃの言葉がどういう意味なのか理解したモララーは、ニヤリと笑った。


「お願いしても?」


「いいわ。ただ、私の交換条件ものんでくれたら…だけど」




しぃの交換条件は、少々厳しいものだった。

この村に二度と戻りたくないそうだ。

理由を問いただしてみたが、理由については、首を横に振るだけだった。

とりあえず、しぃが病気を治す事ができたら、交換条件を飲み込み、こちらの街で住まわせよう。という話で落ち着いた。

今は、三人でもときた道を、森を歩いている。


「なぁ、こんなに武装する必要あったか?」


「あるよ。右とか、左とか見てごらんよ」


その言葉に俺としぃは、キョロキョロと辺りを見回した。

辺りには何か、生物のいるような気配が微かに感じられ、血の匂いが鼻につく。

しぃは、なれてないのか未だ、キョロキョロしている。


「何もいないじゃーー!!」


しぃの言葉の途中で、黒い何かがしぃに飛びついて来た。

一瞬の事で俺は動く事が出来なかったが、元々予想していたのか、モララーは、しぃが襲われるより、少し早く引き金を引いた。


「こ…これ、山犬!?」


四足歩行で、俺らの周りを、囲っていたのは、山犬のようだった。

さきほど、しぃを襲った山犬は、眉間に鉛玉をぶち込まれ、息が耐えている。


「僕が武装させた理由は、わかった?」


「痛いぐらい、わかったっての」


俺とモララーでしぃを間に挟むようにして、背中合わせになった。

パッと見、十匹ぐらいだろう。


「行くぜ。相棒」


「はいはい。血気盛んだね」


モララーの言葉をスタートに、俺らは、銃を打った。

相手は人間よりも、素早い山犬だから何発か、外れるが当たることの方が多かった。



数分足らずして、俺らを取り囲んでいた山犬は、皆息を引き取った。

周りは、山犬の死骸と血の匂いで溢れた。

しぃは、顔を真っ青にして口を抑えている。

生憎、銃だったため、洋服に返り血がつくことは殆ど避けられたが、わからない程度についてしまった。


「おい。しぃ、大丈夫か?」


俺が手を差し伸べるとビクリと怯えたような目でこちらを見てくる。

村にいる頃から誰かを殺したり、血を見たりする経験が少ないんだろう。


「ご…めん。ありっがと…」


俺が、悲しそうな顔をしたからだろうか、しぃは俺の手を掴んだ。

そのまま、手をささえにして立ち上がると目を細めた。


「ふぅ。とりあえず、早く行こうよ。女の子にこんな状況を見せるもんじゃないよ。……歩ける?」


しぃの顔は青ざめたまま、頷いた。





しばらく歩くと、見慣れたいつもの血なまぐさい街に出た。

この頃にはしぃも、だいぶ落ち着いていた。

モララーが地図を開き先頭になって歩く。

コンクリートの塀には、磨いたばかりと思われる綺麗さがあった。家は、殆ど塀に囲われて、少しでも他人が入って来ないようにするためと、思われる。

家しかない道をドンドン歩いて行くと、とつぜんモララーが止まった。


「ここか?」


「地図が間違えてなければ…ここだね」


「…小さい家ね」


インターホンを押すと数秒もたたないうちに、ノマが出てきた。


「お疲れ様です。入っていいですよ」


ノマに、つれられ昼間だというのに暗い家の中に入った。

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