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第1話 仕組まれた罠と婚約破棄

「どうして……どうして死んじゃったの……」


 美しい白銀の髪が大きく靡いた。

 大きな青い瞳から涙がはらりと落ちる。

 そんな彼女の表情にうっとりとし、皆彼女の儚さに心奪われた──。



「やっぱり、モニカの演技は素晴らしいわ……」

「ええ、本当にため息が出ちゃうわね」


 社交界の舞台上で輝く彼女は『白銀の女神』と言われていた。



 舞台の第一部が終わり、休憩時間がはじまると、観客が食事をしながら楽しそうに話している。


「ふう……」


 舞台袖では大きく深呼吸をしたモニカがいた。


 彼女の舞台芸歴は非常に明るい。

 五歳で演劇を始めた彼女は初舞台でたまたま見に来ていたミリア女王にその才能を見出され、王室御用達の役者の一員となった。

 さらに十歳の時には初主演をし、社交界にその名を轟かせることとなる。

 命儚い少年に恋をしてしまううら若き女神の役がヒットしたことから、貴族たちはモニカを『白銀の女神』と呼んだのである。


 そんなモニカは今日の舞台でも観客を見事に虜にしていた。


(皆さん、楽しんでくれているかしら?)


 モニカは舞台袖からちらりと観客の姿を覗く。

 「楽しかったわ」「モニカの演技、今日もいいわね」「あの雪の演出素敵だわ~」と様々な声が聞こえてきた。


(そうなんです! あのシーンは私の演技に合わせて裏から雪の演出をしてくださってそれがすごく素敵なんです!)


 うんうんと頷きながらモニカは嬉しそうに心の中で解説をした。

 そんな時、ふと観客の中に婚約者である第一王子ベルトルトの姿を見つける。


(ベルトルト様! 来てくださったのね!)


 この舞台が終わった後、モニカは王宮の晩餐会へと招待されていた。

 国王と王妃が参加する今夜の晩餐会でモニカはついに第一王子ベルトルトとの結婚を正式に発表するのである。


(いよいよなのね……)


 彼からお守りにとプレゼントされたネックレスをぎゅっと握り締める。


(私、頑張りますから……)


 そう心の中で呟いた時、後ろから舞台で共演していた女優のアイナに声をかけられる。


「聞いたわよ、ついに殿下と結婚の発表をするんですって?」

「ええ、そうなの」

「おめでとう。なら、絶対に今日の舞台成功させないとね!」


 そう言ってアイナは第二部の準備へ向かう。

 そんな彼女の姿を見て、モニカも気を引き締めたのだった。



 第二部の幕が上がって劇がはじまったのだが、終わりのシーンの直前で異変は起きた。


「うう……うぐっ……!」


 なんとアイナが首元を抑えて苦しそうにし、その場に倒れ込んだのである。


「アイナっ!」


 モニカの言葉に観客は何が起こったのかと騒めきだす。

 急いで彼女に駆け寄ろうとしたその時だった。


「お前は近づくなっ!」

「え……?」


 そう叫んだ後、舞台に上がってきたのはモニカの婚約者であるベルトルトだった。

 彼はアイナを抱き起して水を飲ませ、吐き出させている。

 少し落ち着きを取り戻したアイナは、苦しそうに息を乱しながらモニカを指さして言う。


「モニカに毒を盛られました」

「え……!?」


 驚くモニカにベルトルトが大声で叫ぶ。


「アイナはモニカに毒を盛られた! アイナの活躍に嫉妬したお前は彼女を殺そうとした!!」

「ち、違います! そんなことしていません!」


 ベルトルトの怒りの言葉に観客が騒めきだす。


「私はアイナからモニカに殺されるかもしれない、助けてほしいと連絡をもらっていた。それゆえお前の動向を確認していたが、まさか舞台の最中にアイナを殺そうとするとは……」

「違う……違います! 私じゃありません!」

「アイナがお前から毒を盛られたと言っているんだ! この人殺しめ、お前とは今日限りで終わりだ。婚約を破棄させてもらう!」

「そんな……」

「衛兵! あいつは毒殺犯だ、捕まえろ!」


 ベルトルトの言葉を合図にホールの入り口から衛兵たちが押し寄せ、一気にモニカを捕らえた。


「信じてください! 私じゃありません、ベルトルト様!」

「うるさい! 私の名を叫ぶな、殺人者め!」


 その言葉にモニカの心はひどく傷つく。

 そして、衛兵たちに連れていかれる中でモニカはアイナと目が合った。


『バイバイ』


 アイナは嘲笑いながら、そう口を動かした。


第1話を読んでくださり、ありがとうございます!

気に入ってくださった方はブクマや評価☆☆☆☆☆などくださると大変励みになります。

次回に旦那様のオリヴェルが登場します!

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