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茉莉花パニック  作者: 耀羽 絵空


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第11章「統合への道」

 翌日、五人は新しい日常を始めた。しかし、それは単純に元の生活に戻るということではなかった。


 莉花は相変わらず体育大学に通い、カフェでアルバイトをしていたが、『つなぐ人』としての経験が彼女の行動に深みを与えていた。


「おはようございます、莉花ちゃん」


 カフェに出勤すると、店長の田村さんが笑顔で迎えてくれた。


「昨日までの騒動、大変だったね。でも、なんだかみんな以前より元気になったような気がするよ」


 確かに、カフェに来る常連客たちの表情が明るい。茉莉花トニックの一件で一時は混乱したが、最終的にはより良い方向に向かったようだった。


「田村さん、実は相談があるんです」


 莉花は決心していたことを口にした。


「地域の人たちのために、何かできることはないでしょうか?」


「地域のために?」


「はい。昨日の経験で、一人では解決できないことでも、みんなで力を合わせれば必ず道が開けるということを学びました」


 莉花の提案に、田村さんは興味を示した。


「具体的には、どんなことを考えてるんだい?」


「困っている人の相談に乗ったり、地域のイベントを企画したり。小さなことから始めたいんです」


 田村さんは感心したように頷いた。


「いいアイデアだね。このカフェを拠点にして、コミュニティ活動を始めてみよう」


 こうして、莉花の新しい挑戦が始まった。


 一方、三人の茉莉たちも、それぞれの方法で新しい活動を始めていた。


 茉莉Aは、心理学の知識を活かして学生相談室でボランティアを始めた。統合の経験で得た深い理解力を使って、悩みを抱える学生たちの支えになろうとしていた。


「茉莉さん、話を聞いてもらえて、本当に楽になりました」


 相談に来た学生が感謝の言葉を述べると、茉莉Aは優しく微笑んだ。


「大切なのは、あなた自身が答えを見つけることです。私はそのお手伝いをするだけ」


 茉莉Bは、持ち前の等身大の感性を活かして、学生同士をつなぐ活動を始めた。孤立しがちな学生たちに、仲間を作る機会を提供していた。


「最初は不安だったけど、茉莉さんが背中を押してくれたおかげで、友達ができました」


 内気な学生の言葉に、茉莉Bは嬉しそうだった。


「みんな、本当はつながりたいと思ってるんです。きっかけさえあれば」


 茉莉花は、大学院での研究を続けながら、パラレルワールド現象についての学術的な研究を深めていた。今回の経験を科学的に分析し、将来同じような現象が起こった時の対策を考えていた。


「このデータが正しければ、世界分離現象には一定のパターンがあります」


 指導教官の山田やまだ教授に研究成果を報告すると、教授は深い関心を示した。


「君の研究は、心理学と物理学の新しい融合領域を開拓するかもしれない」


 そして週に一度、五人は必ず集まって、近況報告と情報交換を行うことにしていた。


「今週は、どんなことがありましたか?」


 愛先輩の質問に、それぞれが活動報告をする。個々の活動は小さなものだったが、それが積み重なって、確実に地域社会に良い変化をもたらしていることが分かった。


「みんなの活動が、つながってますね」


 莉花が気づいた。


「茉莉Aさんが相談に乗った学生が、茉莉Bさんの企画したイベントに参加して、そこで出会った仲間と一緒に茉莉花さんの研究に協力してる」


「本当ですね」


 茉莉花も感心した。


「これも一種の『つながり』の力かもしれません」


 五人の活動は、次第に大学や地域の注目を集めるようになった。しかし、彼女たちは有名になることよりも、実際に人々の役に立つことを重視していた。


 ある日、花想庵を訪れた五人に、店主は興味深い情報を教えてくれた。


「実は、他の地域でも似たような現象が起こり始めています」


「他の地域でも?」


 莉花が驚いた。


「はい。世界分離ほど深刻ではありませんが、人々の心の分裂が社会問題を引き起こしている地域があります」


 店主の話によると、現代社会の複雑さやストレスが原因で、人々の心が分裂し、それが様々な社会問題を引き起こしているという。


「もしかすると、皆さんの経験と知識が、そうした問題の解決に役立つかもしれません」


「私たちが?」


 茉莉Aが驚いた。


「はい。ただし、無理をする必要はありません。今やっている活動を続けていれば、自然とそうした人たちとの出会いがあるでしょう」


 店主の予言通り、その後数週間で、五人のもとには様々な相談が舞い込むようになった。


 家族の不和に悩む人、職場の人間関係で困っている人、自分の将来に迷っている人。問題の規模や内容は様々だったが、根本にあるのは「つながり」の不足だった。


「どの問題も、結局は人と人とのつながりの問題なんですね」


 愛先輩が気づいた。


「そうですね」


 莉花も同感だった。


「私たちが茉莉花トニックの問題を解決できたのも、最終的にはみんなでつながったからです」


 五人は、それぞれの得意分野を活かしながら、相談者たちの問題解決を支援するようになった。茉莉Aが心理的なサポートを、茉莉Bが実践的なアドバイスを、茉莉花が理論的な分析を、莉花が行動力を、愛先輩が全体のバランス調整を担当する。


 完璧なチームワークが、多くの人々の心を救っていった。


 そしてある日、五人は重要な決断を下した。


「正式に、支援活動のグループを作りませんか?」


 茉莉花の提案に、全員が賛成した。


「名前は何にしましょう?」


 愛先輩が尋ねると、莉花が即座に答えた。


「『つながりの会』はどうでしょう?」


 シンプルだが、彼女たちの理念を完璧に表現した名前だった。


「いいですね」


 三人の茉莉も同感だった。


 こうして、『つながりの会』が正式に発足した。小さな活動から始まったが、それは将来大きな影響を与える組織の始まりでもあった。

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