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第48話(終) 代償の果て
懐中時計の針が止まると同時に、異空間の扉が静かに閉じた。
荒い呼吸を繰り返しながら、中村は現実の街路に膝をつく。
夜明けの気配が空を染めていく。
薄い青の空気が、現実に戻ったことを告げているはずだった。
しかし、手の中の懐中時計がかすかに震えていた。
針はゆっくりと動き出す。
それは、確かに逆回転していた。
「……終わってない」
背後で、異空間へ踏み出す先輩の足音が響く。
振り返った時には、もうその背中は闇に溶けていた。
中村は懐中時計を強く握りしめる。
その冷たさが、これから訪れる“本当の終わり”を告げていた。




