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第40話 森の番人

 光の前に立ち塞がった影は、霧の中からゆっくりと姿を現した。

 それは獣とも人ともつかぬ異形だった。

 四足で立ちながら、背丈は人間の倍以上。

 顔は仮面のように白く、裂けた口からは蒸気が漏れている。


 「……あれが番人か」

 中村が呟く。奈央は唾を飲み込みながら、一歩後ずさった。


 番人の目が赤く光った瞬間、森全体が再びうなり声をあげる。

 すると、これまでに現れた“執着”の幻たちが、周囲の霧の中に浮かび上がった。

 彼らは動かず、ただじっとこちらを見ている。


 「試練は終わってない……」先輩が低く呟く。

 「これまでの選択が、俺たちを通すかどうかを決めるんだ」


 番人はゆっくりと歩み寄り、巨大な腕を振り上げた。

 しかし振り下ろされる直前、周囲の幻影たちが一斉に動いた。

 中村がかつて断ち切った母親の幻が、番人の腕を押さえる。

 奈央の幻――白い犬が、番人の足に食らいつく。

 そして先輩の彩も、静かに番人の目の前に立ちはだかった。


 「……お前たち……」

 先輩が呟くと、番人は苦しげに唸り、動きを止めた。


 その隙に、光の道がはっきりと見える。

 「今だ!」

 三人は駆け出し、霧を切り裂いて光へと飛び込んだ。


 次の瞬間、耳をつんざくような叫び声と共に、全てが真っ白になった――。

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