表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/48

第39話 最後の試練

 森の霧がさらに濃くなり、肌を刺すような冷気が流れ込んできた。

 中村と奈央が見守る中、先輩の前にも霧の渦が現れる。


 やがて、その中から一人の女性が姿を現した。

 長い黒髪、淡い水色のワンピース――。

 その顔を見た瞬間、先輩は一歩後ずさった。


 「……あや……」

 その名を呟く声は、震えていた。


 女性は微笑み、ゆっくりと近づく。

 「あなた、まだ私を忘れられないのね」

 「忘れられるわけ、ないだろ……あの日、俺が――」


 先輩の言葉はそこで途切れた。

 女性がそっと彼の手を握る。

 「じゃあ、一緒に帰りましょう。もう、苦しまなくていいの」


 奈央が小声で中村に囁く。

 「……あれが、先輩の執着?」

 中村は頷くが、何も言えない。


 先輩は、手を握られたまま立ち尽くしていた。

 その顔は苦しみと未練が入り混じっている。


 「……俺は……」

 先輩は拳を握りしめ、ゆっくりと顔を上げた。

 「……もう行けない。お前は、ここにはいないんだ」


 その瞬間、女性の表情が悲しげに歪み、そして霧と共に消えた。

 重苦しい空気が一瞬、緩んだ。


 だが次の瞬間、地面が震え、森全体がうなり声をあげる。

 遠くの霧の向こうに、わずかに光が見えた。

 「……出口だ!」


 しかし、その光の前には、巨大な影が立ち塞がっていた。

 森の“本当の番人”――最後の罠が、姿を現したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ