第34話 目覚めた場所
――チチチ…
耳に届くのは、遠くで鳴く小鳥の声。
中村がゆっくりと瞼を開けると、視界に映ったのは青い空と木漏れ日だった。
「……ここ、どこだ?」
身体を起こすと、隣で奈央がぐったりと横たわっている。
少し離れた場所には、先輩が剣を突き立てたまま膝をつき、静かに呼吸を整えていた。
「目が覚めたか」
低く落ち着いた声。
中村はあの儀式の光景を思い出し、胸が締め付けられる。
「……あの半身は?」
先輩は少しの沈黙のあと、視線を空へ向けた。
「完全には消えていない。だが、今はお前の中で眠っている」
奈央が身じろぎし、ゆっくりと目を開ける。
「……助かったんだね」
先輩は小さく頷くが、その表情はどこか影を落としていた。
「先輩……どうして、あそこに来られたんですか?」
中村の問いに、先輩は淡々と答える。
「昔、俺も同じように“呼ばれた”ことがある。あの仮面も、羽の影も……全部、俺が通った道だ」
中村は息を呑む。
「じゃあ、あの敵……先輩の時から?」
「ああ。ただ……俺の時は、取引に失敗して生き延びられなかった奴もいた」
沈黙が落ちる。
風が木々を揺らし、葉擦れの音が耳に残った。
先輩は立ち上がり、剣を背に収めると、二人を見下ろすように言った。
「……ここから先は、俺が付き合う。お前らだけじゃ、また同じ目に遭う」
奈央がわずかに笑う。
「心強いけど……その代わり、先輩の話、全部聞かせてもらうからね」
先輩は一瞬だけ口元を緩めた。
「……ああ、約束だ」




