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第32話 欠けた決断

 「……半身を、置いていく」

 中村の声は震えていたが、はっきりとした意思を帯びていた。


 奈央が叫ぶ。

 「やめて! そんなの……そんなの嫌だ!」


 仮面が冷笑する。

 『愚かな選択だ……だが面白い。さあ、始めよう』


 足元の地面に、複雑な紋様が浮かび上がる。

 赤黒い光が脈打ち、空気がひりつくような冷たさを帯びていく。


 羽の影が静かに手をかざすと、紋様の中心に黒い裂け目が開いた。

 そこから現れたのは――中村と同じ姿をした“もう一人の中村”だった。

 だが、その目は虚ろで、感情の色がなかった。


 「これが……俺の半身……?」

 声はない。ただ、じっとこちらを見返している。


 羽の影が告げる。

 『お前の魂を二つに分ける。片方は現実に、片方はここに。互いに会うことは二度とない』


 儀式が進むにつれ、中村の体から淡い光が引き剥がされ、半身へと吸い込まれていく。

 奈央は必死に足を踏み出そうとするが、見えない力に阻まれて前へ進めない。


 「やめろ! やめてくれ!」

 その叫びが闇に飲まれる直前――


 ――ズガァンッ!


 轟音とともに、天井を突き破るように光の槍が降り注いだ。

 仮面が即座に飛び退く。

 「……何者だ」


 降り立ったのは、白い外套を翻す一人の人物。

 その手には、眩い光を放つ長剣。


 「間に合った……中村、奈央、下がれ!」


 声を聞いた瞬間、私は息を飲んだ。

 ――その人物は、現実世界で消息を絶っていた、あの“先輩”だった。

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