第27話 黒き面の声
刹那、異形が地を蹴った。
黒い残像が視界を裂き、次の瞬間、背後から風圧が襲いかかる。
「くっ!」
振り返るより早く、背中に鈍い衝撃。
防御魔法が軋む音が耳に響く。
――速い。
さっきまでの動きとは比べものにならない。
中村は一歩前に出て、私の前に立った。
歯車の武器が黒い刃を受け止め、火花が飛び散る。
その瞬間、異形の口元がわずかに動いた。
いや――口なんてないはずなのに、確かに声が響く。
「……返せ」
私と中村は目を見合わせた。
「今……喋ったか?」
「聞こえたな」
「……返せ……“核”を……」
黒い面の奥から響くその声は、怒りよりも悲しみに近かった。
同時に、中村の脳裏にまた光景が閃く。
* * *
崩れ落ちる塔。
手を伸ばす少女の顔は涙でぐしゃぐしゃに歪んでいる。
「行くな! お前が……核なんだ!」
しかし少女は首を振り、歯車のメダルを中村の胸に押しつける。
光と共に、少女の姿は消えた――。
* * *
「……核って、あの時の……」
中村の手のひらにある仮面の破片が、淡く光を放ち始める。
異形がその光に向かって手を伸ばした瞬間、空間全体が悲鳴を上げるように歪んだ。
「まずい、中村、ここ、崩れる!」
「……いや、逃げられねぇな。終わらせる」
歯車の刃と黒い面が、閃光を放ちながら再び衝突した。




