表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/48

第12話 濡れた足音

階段を駆け下りる間じゅう、背後から“ぴちゃ…ぴちゃ…”と水を踏みしめる音がついてきた。

 それは一定の間隔で、俺たちの足音と微妙にずれている。

 まるで、もう一人、いや…“もう一つ”がついてきているみたいに。


 「速く!」

 中村が手すりを滑るように下り、俺もそれに続く。

 心臓が爆発しそうだ。

 階段の踊り場に差し掛かったとき、視界の端に赤い雫が落ちるのが見えた。

 ポタ…ポタ…と、鉄臭いしずくが俺の靴先に落ちる。


 「やばい!」

 振り向いた瞬間、階段の上には誰もいない――ただ、濡れた足跡だけが、こちらに向かって延びていた。


 1階に飛び出した俺たちは、すぐに後ろを振り返った。

 だがそこには、水の跡すら残っていなかった。

 まるでさっきの出来事が全部幻だったかのように。


 「……ほら」

 中村がポケットから、くしゃくしゃになった紙片を取り出した。

 それは、俺たちがこの廃ビルに来る前に、元同僚から渡されたというメモだった。


 《消灯後、屋上の水は見るな》

 《もし見たら、すぐに目を逸らせ》

 《赤い女は、降りてくる》


 ――どうして、もっと早く見せてくれなかったんだ、中村。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ