4.姉との再会
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門をくぐった先には洋風の街が広がっていた。
パンをカゴに詰めている女性や、中央付近にある噴水で仲良くお喋りしている男女。
この街は平和なんだろう。
「ねえルビア、姉さんたちはどこなの?」
「申し訳ございません、ミリア様。私もこの街に居るとしか聞いていないので……」
なるほど。
では、この街のどこかにいる姉と母を探さなきゃいけないのか。
「この街のどこかにいるはずなので、街を見歩きながら探しましょう」
ルビアも俺と同じ考えのようだ。
俺はルビアに手を繋がれ街を回った。
「……ちょ、ルビア? 手を繋がなくても……」
「迷子になったらいけないので……」
「私はもうそんな年じゃないよー!」
ルビアはそんな俺の声を無視して街の中に進む。
◇
この街は活気があって、おもしろい。
道で陽気にピエロの恰好をして、芸をする者や、買ったパンにおまけをくれるおばさん。
どこを歩いてもいい人たちばっかりだった。
「ミリア様、歩きすぎたので少し休みましょう」
「うん、そうだね」
おっと、ここは「そうね」という方が女の子っぽかったか?
まだ、慣れないな。
最初に門をくぐった場所に戻ると、噴水の近くのベンチに座った。
「わあー、ルビア見て! 噴水の水綺麗だよ」
噴水が見たことないわけではないが、久しぶりにしっかりと見る噴水に俺は興奮していた。
ルビアも噴水を見ると優しく笑った。
俺はもう少し近くで見ようと噴水に近づき、下に溜まった水を覗いた。
そこには、ここに来て初めて見る自分が水面に映っていた。
お? これが今の俺か? 以外に可愛いじゃないか。このまま育てば、モテまくりだぞ?
水面に映る少女に関心を覚えながら、俺はこれが今の自分の姿だと再認識する。
これが今の俺。誰がどう見ようと小さくて可愛いただの女の子――。
のはず、だったんだけどな。
俺が転生してこの女の子の中になっていなければ、ミリア・バートルという少女は普通の女の子だった。
でも、その少女は今は俺になっているのだ。
罪悪感のようなものが少しある。
でも、今は俺がミリア・バートルなのだ! いや、俺ではなくてもう私か……。
そうだな! 今から俺――いや、私は! 本当の女の子として生きていこう!
それが、唯一私ができる、ミリア・バートルへの罪悪感を軽減できる方法なのだから。
「……どうしました? ミリア様。顔色が悪いですよ?」
「あ、ううん。大丈夫、なんでもないよ」
「そう、ですか?」
ルビアは、過保護だな。
ルビアは、昨日からずっと私の事ばっかりだ。
私に向ける心配そうな眼差しがよくわかる。
父を亡くしたことを知り、記憶がないことにもなっているからな、心配するのも仕方ないか……。
そんなこと、考えていると――。
「……ミリア……?」
私を呼ぶ声だ。
振り返ると、大きなカゴにパンを詰めて両腕で抱える女の子。
髪は真っ赤に染まり、肩までなびかせている。
目は私と同じ薄い赤色だ。
「レレア様。お久しぶりです」
呆気にとられている私の隣で、ルビアがあいさつした。
レレア。ここに来る前にルビアが話していた、姉の名前だ。
つまり、この人が姉さんということ。
だがしかし、髪色が全く違う。
まあ。遺伝子的なものなのだろうけど。
私は姉の方を向き挨拶をしようとした。
感動の再会ってやつだ、涙の一つでも流しておくべきだろうか……。
っ!? 言葉が出ない! き、緊張だ! 実の姉だというのに! 感動の再会だというのに! 緊張で言葉が出ない!
まあ、前世でも女性と喋るのは少し苦手だったけど……。
私はあまりの緊張と自分の不甲斐なさに目に涙を溜めながら、ルビアの後ろに身を隠す。
ルビアとレレアも驚いていた。
「ミリア……」
レレアの悲しそうな表情。
あー! 私は最低だ! 自分の不甲斐なさで女の子をこんな顔にさせてしまうなんて……!
ごめんなさい、レレア……。
「レレア様。ミリア様は旦那様を殺害した男に命を狙われました。その際あまりのショックからなのか、記憶がなくなってしまい……。レレア様のことも覚えていないのかもしれません」
「そう……だったの……」
ルビアが私の現状を説明すると、レレアは隠れる私の前まで来て、そっと抱きしめた。
急だったため、私も少し焦ったがレレア、いや姉さんの温かい腕がいつの間にか心地よく感じ受け入れていた。
「ミリア……辛かったね。こんな時にそばに居てあげられなかった私を許して……。記憶はゆっくり思い出していけばいいからね……」
あたたかい言葉だった。
転生してから全然経っていないが、正直言って苦しかった。急に殺し屋の男に襲われ、父は死に母と姉は別の場所にいる。
こんな状況で、平気なわけない。
でも、ずっと私のそばに居てくれたルビアと、今の姉さんの言葉を聞いてどこか救われた気がした。
そして私は泣いていた。
泣き声は出さなかったが、ぽろぽろと涙の粒を姉の肩にこぼしていた。
姉さんはそんなこと気にせず、数分の間そのままの体制が続いた。
◇
涙も止まり、落ち着いて姉の顔も見ることができるようになってから。
「……そろそろ、私たちの家に帰ろっか」
姉さんの持っていたパンはルビアが「私が持ちます」と持ってくれた。
レレアの空いた手は私の手を握った。
さっき、ルビアと繋いだ時は少し恥ずかしかったけど、今は姉さんとの仲をもっと深めたかったので、気にならなかった。
嬉しそうに歩いている私とレレアの後ろで、何やらルビアが羨ましそうに見ている気配を感じたが、気のせいということにしておこう。
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