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残り物

作者: gamii

 

 死んだ。やっとあいつが死んだ。

 

 私には昔っから苦手な奴がいた。そいつが死んだのだ、病気で。

いつもヘラヘラしてたし、そのわりにはすぐ愚痴を言うし、好きな人とか好きな芸能人のことはめちゃくちゃ喋る。ほんとに凄く喋ってた。テスト勉強という名目でカフェに3時間くらい居座っていた時も、あの人はずっと口が動いてた。そんな奴に心を開いていた。


 小学校中学校は平凡に生てきた。勉強も運動もそこそこ、習い事も少しやってたくらいで普通の人間だった。

変わったのは高校からだ。正確にいうとあの人に会ってから私はダメ人間になっていった。

中学の友達の友達の友達。私たちの関係はそっからだった。そこからもうすごいが彼女という存在もすごかった。肌が白く手足が細長い、程よい筋肉量の痩せ型、身長は高く顔面は上の中だ。第一印象は「綺麗」それでしかなかった。私は何もかも平凡だったがゆえ(身長は低めの太り気味だったが)天秤にかけていた。

 彼女はぶっとんでいた。今度遊ぼうと誘われ、初めての遊び場が「浅草」。これが他クラスでメールでしかやり取りしないような仲だった私たちの初めての遊び場だ。変わっている子だと私は思った。

 意外と気が合ったのかなんなのか、たびたび遊ぶようになっていった。そもそも固定の友達やグループを作りたくなかった私にとってはレアだったかもしれない。美術館や自然いっぱいの公園、カラオケ、旅行、あぁ、意外とたくさん行ってる。

 一緒に過ごす時間が増えるほど私はダメ人間に近づいていった。彼女は金持ちだった。私はお金がない人間だったからバイトをして、そのお金を破産する勢いで使っていた。彼女に合わせるために。彼女と私を比べることも増えていった。どうしても彼女といると自分を嫌悪してしまう。決まった人間としか仲良くしないなんてつまらないし色んな人と話すことはいいことだ、と思っていた私の会話の固有名詞に彼女の名前があった。話し方やテンポも似ていた。

 高校三年生に上がるタイミングに私は距離を置くことにした。自分が自分じゃなくなる気がしたから。彼女のせいにしているっていうのは分かっている。だから変に喧嘩せず自分を落ち着かせようと思ったのだ。

でも彼女はそんな私でもかまってきた。懲りずに好きな芸能人の話をしてきたりした。

たびたび学校をサボるようになり、本当にダメになってしまったと思っていた。それでも彼女はメールでも追ってきて、他クラスなのに大丈夫と聞いてきてくれた。恥ずかしかった。どんなになっても私を気にしてくれて明るく接してくれる。それに対して私は。勝手に疲れてサボって。彼女と会わなければ平凡でいれたかもしれないのに、と考えてしまっていた。


 そんな彼女が高校三年生11月死んだのだ。私はすっきりしていいはずなのに涙が流れていた。やめてほしい、

いつも天秤でかけてたあの人が急にそんな姿になるのは。今まで一生懸命天秤がまっすぐなるように頑張っていたのにまたどん底に落とされていく感じ。残酷すぎる。あんたに対等になりたかった。自分じゃなくなる手前まで頑張ってた。それなのに。あんたがいなくなったら、あんたみたくなろうとしてた私に何が残るわけ。一緒に遊んだ記憶?あんたとの会話のテンポ?口癖?一緒に引いた大吉の神社のおみくじ?カラオケでよく歌った曲?浅草でもらったうちわ?私も一緒に嫌いな奴の愚痴をしたり、どうせ1週間で冷める好きな芸能人を熱弁したり、もっとくだらないことしとけばよかったよ。みんないつかなくなるんだから。


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