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エピソード1:デッド・ハイツの日常 / 2

 嶺想寺は和茶に言った。デッド・ハイツには秘密があるんだ、と。生首を入居させていることが?和茶がそう尋ねると、嶺想寺は「もっと範囲の広い秘密だよ」と唇に人差し指を当てた。妙に色っぽく、大抵の女性がイチコロなんじゃないか。そんな仕草だった。当然、和茶はときめかなかったが。しかし、別の意味でドキドキさせられることになる。


 嶺想寺が和茶に明かした、デッド・ハイツの秘密。それは、事前に聞いていたら、和茶は絶対にここへ入居しなかったであろう類のものだった。




 「あのね、飯山さん。デッド・ハイツにはゾンビの人や幽霊の人、咲田さんみたいな生首の人も入居しているんだ」




 ──あのね、飯山さん。さん、さん、さん。デッド・ハイツには、には、には、には。ゾンビの人や幽霊の人。人。人。人。咲田さんみたいな生首の人も。人も。人も。人も。入居しているんだ。んだ。んだ。んだ。……和茶の耳から入った、嶺想寺の爆弾発言。エコーが掛かり、脳内でエコーする。その秘密が、家賃2万円の秘密?


 やっぱり事情があるんじゃないか!!和茶は心の中でそうツッコミを入れて、相葉の家に戻ることを決めた。が、しかし。嶺想寺の言葉には続きがあった。



 「もし、今回のことでうちを出ようと思っているなら、残念なお知らせがあるんだけど、聞きたい?」


 「……何ですか」


 「飯山さん、保証人を付けていないから、契約を解除するなら100万円頂きます。払えない……よね?」



 和茶の思考は停止した。そんなの、契約の時に聞いていない。いや、あの不動産の老夫のことだ、面倒くさくて説明を省いたに違いない。当然、100万円なんて払えるわけがないから、和茶はこのまま、デッド・ハイツに住み続けるしかないのだろう。嶺想寺が、申し訳なさそうに笑っている。和茶は無神論者だが叫びたかった。オーマイゴッド!!


 ……こうして、和茶は波乱の春を過ごしたのである。ちなみに、相葉は大学に入学早々、彼女を作って家に連れ込んでいるらしい。どの道、和茶に帰る場所は無かった。帰れるとしたら田舎だが、その選択肢は和茶の中には無かった。和茶だって。和茶だって。大学で可愛い彼女を作って、大学生活をエンジョイしたいのだ。

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