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プロローグ:春、始まり / 3

 和茶が相葉宅に戻ると、相葉は手料理を作って和茶を待っていた。和茶の手土産、相葉の好物であるフライドチキンも加えて、2人は食卓を囲んだ。



 「それにしても、和茶が早々にうちを出ちゃうとか、寂しいなー」



 そう言いながら、相葉はどこか嬉しそうだった。和茶は子供の頃からの付き合いである相葉の建前くらいは見破れる。大学が始まったら、相葉は彼女を作り、きっとこの自宅に連れ込むのだろう。そういうことがしたいが為に、和茶が家を出ることを喜んでいるのだろう。単純な奴だからな、と、和茶は相葉の手料理を口に運ぶ。



 「相葉、短い間だったけど、ありがとう」


 「なーに言ってんだよ、和茶。どうせサークルでも一緒なんだし、今さらだって」


 「……サークル?」



 和茶は箸を止めた。サークルというと、大学のサークルのことだろうか。同じサークルに所属する、なんて話はしたことがないのだが。そして、相葉は爆弾発言をする。──心霊サークル、楽しみだな!……心霊サークル?なんの冗談だ?繰り返す。和茶は、怖いものが大の苦手なのだ。思わず箸を取り落とす和茶の肩を、相葉が叩く。


 どこまでも一緒だからな!親友!そう言って、ハグまでしてくる。和茶は変な汗をかきながら、どうサークルの話を断ろうか考える。しかし、相葉は相葉で凶悪な笑みを浮かべて、和茶の耳元で囁く。──家が見つかるまでの間、ここに置いてやったの、だーれだ?……和茶は何も言えなかった。しかし、よりによって……心霊サークル。



 「……なぁ、心霊サークルなんて言っても、お遊びだよな?」


 「どうだろ。俺が事前申請に行った時はヤバげな儀式やってたけど」


 「……田舎に帰りてぇ。めちゃくちゃ田舎に帰りてぇ」



 和茶はヤケになって、フライドチキンに齧り付く。チキンは涙の味がした。相葉の方は上機嫌に鼻歌なんて歌っている。相葉 ゆうという男は昔からこうなのだ。頼りがいのある親友でありながら、悪戯に和茶を振り回す。こうして、和茶の大学ライフは背筋の凍るものとなることが決まり、この晩、和茶はカオスな悪夢でうなされた。

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