エピソード5:酒飲みおじさんの闇鍋パーティ/ 5
和茶は調理用の塩を片手に、開け放たれた窓の前に立った。塩をちらつかせながら本間の相手をする。どうやら、闇鍋に入れてはいけない物がいくつかあったらしいのだ。うっかり言うのを忘れていた、では済まされない話だ。そして、本間は「闇鍋に入れてはいけない物リスト」を持参して来ていて、それを和茶に渡した。
「えーっと……粗大ゴミ、不燃ゴミ、生ゴミ、腐敗物」
「駄目だろー?それ入れちゃ」
「……誰がこんなもん入れるんスか」
「だって、やるのは闇鍋だもんよ」
本間と和茶のやり取りを見ていた一香が、笑った。そして、鈴の音のような声で言った。──デッド・ハイツに住んだら毎日楽しそう!……全力でお勧めしない。全力で思い留まらせる。和茶は何か話題を変えようと思い、本間に言った。何で窓にいたんスか、と。本間は不敵に笑った。玄関からじゃ入れてくれねぇだろ。まぁ、それはそうなのだが。
和茶はとりあえず、本間に塩を撒いておいた。が、何の影響も無いようで、本間はしょっぺーな、と塩を舐めている。もういい、早く嶺想寺に話を聞いてもらいたい。何かあると嶺想寺を頼るのもどうかと思うのだが、嶺想寺はこのデッド・ハイツの大家だ。住人に困り事があれば相談に乗るのも仕事だろう。和茶は窓を勢いよく閉めた。
「いいの?和茶君」
「いーよ……。それより、ゲームでもしねぇ?」
「あ、私ね、新作のホラーゲーム持ってきたよ!」
……デッド・ハイツでホラーゲーム。一香は和茶が怖い物に興味があると勘違いしているので、たまにそういうセレクトをする。心霊現象が怖いなんて男として情けない、という古めかしい考えは如何なものかと思うが、既に、和茶は一香に情けない部分を見せまくっている。それならば、恥の上塗りはしないべきだ。受けて立とう。
しかし、和茶はホラーゲームをプレイして、また甲高い悲鳴を上げてしまった。和茶は思った。一香と全てを分かち合うことは出来ないのだろう、と。それでも、一香のことは好きだ。ちなみに、ホラーゲームは後日、一香が1人で完全に攻略した。一香に怖いもの無し。和茶はその言葉を心に刻んでおくことにした。




