エピソード5:酒飲みおじさんの闇鍋パーティ/ 4
本間を追い出したあと、和茶は嶺想寺のいる管理人室に行こうか悩んだ。しかし、まだまだ一香と一緒にいたい。そして、悩んだ末、一香が帰ったら、即時、管理人室へ行くことを決めた。一香はさっきまで本間が座っていた、エアコンの風が直接当たる、涼しいポジションで寛いでいる。変わっているところもあるが、可愛い彼女である。
しかし、この時期に鍋って。しかも、致死性の高そうな闇の鍋だ。和茶は胃薬を持って行くことにした。食材は、胃の粘膜を保護してくれるとかくれないとか、牛乳にする。鍋の味を変えてしまうが、致死性は低くなるだろう。そうであってほしい。自分のまだ大して生きていない人生を終わらせたくないのだ。勿論、一香のことも心配している。
一香が死んでしまったら、もしくは、別れてしまったら、和茶はもう誰とも付き合うつもりはないのだ。重たい男だと思われてもいい。
「……ねぇ、和茶君」
「ん?」
「私は大丈夫だから。和茶君は自分の心配をしてね?」
どういうことだろう。一香は人の心が読めるのだろうか。和茶は一香の顔をまじまじと見てしまう。そんなに見たら穴が空いちゃうよ、と言われても。たまたまに過ぎない。そうに決まっている。和茶はそう思い直し、一香の隣りに座る。冷風が気持ち良い。管理人室まで数メートル、暑いだろうなぁ、と思いつつ、少しだけカーテンを捲る。
そこにはいつもと変わらない、ちょっとした庭スペースがあるはずだった。しかし、違った。和茶が見たのは、窓ガラスに張り付く、本間。
「きゃああああああああああ!!!」
思わず、きゃーと叫んでしまった。ショックからのパニックの余り、性別を忘れた。一体、どういう状況なのだろうか。ガタガタと震える和茶、まだ動じない一香。今だ、今なら清め塩を撒いていいだろう。和茶は震えながら清め塩を探す。一香は窓を開けてしまった。どうされたんですか?と本間に声を掛ける。和茶なら違う対応をする。
確実に仕留められる量の清め塩を。撒く。残念過ぎる変態イケおじに向かって。しかし、一香は普通に本間と会話をしている。和茶と一香、対照的な恋人同士である。そして、探していた清め塩は今朝、切らしたことを思い出し、和茶は落胆した。もういい、調理用の塩を撒こう。と、和茶が塩を手にした時だった。
窓の方から本間の声がした。──闇鍋に入れちゃいけねーもんあったわぁ。……一体、何なのだろうか。和茶は渋々、本間の相手をすることになってしまった。




