エピソード5:酒飲みおじさんの闇鍋パーティ/ 3
本間は和茶の部屋に上がるなり、1番エアコンの風が上がる位置に座った。そして、冷たい飲み物を要求してきた。和茶は熱湯でも出してやろうかと思ったが、よく知らない相手に先制攻撃を仕掛けるのは戦略としてイマイチだと考えた。和茶は冷蔵庫にあった炭酸ジュースをペットボトルごと渡した。コップに入れなかったのは、細やかな攻撃だ。
一香にも飲み物を出した。ちゃんとコップに入れた、濃いめに作ったジュースを。自分は適当に冷茶を飲む。さて、本間には何から話してもらおうか。やはり1番は「特殊体質」か。生きているのか、死んでいるのか、特殊体質なのか。あぁ、と、和茶がため息を吐く。思考が暑さでやられている気がする、と。本間はジュースを味わっている。
「本間さん。特殊体質って、なんスか?」
「あぁ、俺、都合が悪くなると幽霊になれんの」
「……死んだ経験は?」
「臨死体験なら」
……余りにもサラッと言うなぁ、というのが、和茶の感想だった。そして、聞きたくもないエピソードを本間が語り出し、和茶は本間を部屋に上げたことを後悔し始めた。飲み屋の帰りに美女が運転する車に轢き殺されかけた、という命に関わるエピソードも語られ、この人は死んでもこの人なんだろうな、と思う。
その交通事故が切っ掛けで特殊体質になったんだよなぁ、と語る本間は、懐かしい記憶に浸っているようだった。一香はそんな本間の語りを、うんうん、と相槌を打ちながら聞いている。付き合う前から思っていたが、一香は豪胆だ。そして、天然なところもある。そういったところも含めて好き、なのだが、たまに付いていけない。
「本間さん、闇鍋パーティって、どんな物を持ってくればいいんですか?」
ほら、何も恐れずに本間と話している。普通、臨死体験で特殊体質になったイケおじと何事もなかったかのように話せるだろうか。本間はイケメンフェイスをだらしなく緩ませて一香に答える。──大体の人が死んでるから何でもいいよ。……俺とか俺とか俺とか、まだ現役で生きてるんですけど!?死んでない人も来るよな!?
和茶はちゃぶ台をひっくり返したいような気持ちになり、本間を部屋から追い出すことを決めた。重要なことは聞けたんだ、もういいだろう、と。




