エピソード4:心霊少女の魔払い教室 / 2
和茶がまだ名前も聞いていない少女、高木 八重は、和茶が冷蔵庫から出した冷茶のカップを手に、話し始めた。子供だしジュースとかの方が良かったかな、と、和茶は思ったが生憎と甘い飲み物は常備していなかった。八重はまず、名乗った。隣室の高木の家の八重と申します。小学校6年生だという八重は、妙に大人びて見える。
和茶も自己紹介をした。飯山 和茶。大学生で、心霊サークルに入っている凡人だ、と。和茶の「心霊サークル」という単語に八重は反応した。というより、顔色を変えた。変わり者だと思われたか、と思ったが、そういうわけではなかったようだ。八重は言った。だからそんなに憑いているんですね。……和茶が顔色を変える番だった。
「……憑いてるって、何が?」
「えーっと、おじさんが数名……」
和茶は心の中で思った。それ、多分、心霊サークル関係ない、と。和茶に「憑いている」のは恐らく、カラオケスナックでお経を披露したお客さんたちだろう。天国だか地獄だが知らないが、いた場所に帰れ、という和茶の思いは誰にも届かない。もうどうしようもない。そう、和茶が絶望しかけた時、八重が言った。祓いましょうか?と。
祓う?八重というこの幼い少女が幽霊を?しかし、八重は先程、鏡を見ていったのだ。もう何もいない、と。それ即ち、見えるというより「視えている」のだろう。しかし、一応は聞いておく。──八重ちゃん、霊感があるの?……八重は頷いた。お寺のお坊さんからお墨付きを貰った、魔払い術が使える。重々しく、しかし、小さく呟いた。
「祓いましょうか……?悪霊ではないですが、他のものを引き寄せます」
「あー……じゃあ、お願いしようかな。あ、なるべく優しくしてあげてね……」
「分かりました、でも、このアパートで魔払いをしたら近所迷惑なので、お寺に行きましょう」
まだ日は高い。近所のお寺まで歩いたら、いつものことだが汗だくにならなければならない。だが、背に腹は変えられない、という言葉がある。確かに、あっち側の人が多いこのデッド・ハイツでお祓いなんかしたら近所迷惑になるだろうし。和茶は八重と一緒にお寺に行くことを決めた。除霊が成功した暁には、八重にアイスを奢ろう。
八重と一緒にデッド・ハイツを出ると、お寺までの道のりで嶺想寺と会った。手には野菜の入った買い物袋。この人も買い物とかするんだな、と、和茶は思った。八重は嶺想寺に深々とお辞儀をする。しっかりし過ぎているなぁ、と感心しつつ、和茶も嶺想寺に会釈をする。嶺想寺に、ふざけ気味に言われた。デート?
……そんなわけあるか!和茶は心の中で嶺想寺にアッパーを食らわせた。




