エピソード3:お盆の過ごし方 / 6
フラグは回収された。カラオケに入った和茶と一香は、お互いに歌うものをリクエストし合ったのだが、一香は和茶にお経のリクエストをした。食べ物も飲み物も持ち込み可能なカラオケで、一香は和茶の詰めてきたお惣菜、そして、自分で作ってきたおにぎりを食べながら和茶のお経を聴いた。和茶はヤケになり、声を張り上げた。
唱え終わった和茶に、一香はアンコール。しかし、バイト先で散々アンコールを貰った和茶はお腹いっぱいだった。つまり、限界値。
「あー……。俺、お坊さんにはなれねぇわ」
「和茶君なら大丈夫じゃない?」
「いや、無理。俺がお坊さんになったら、色んな意味で生臭坊主って言われるわ」
和茶は一香にラブソングをリクエストして、自分は弁当箱のお惣菜と一香のおにぎりを食べて休憩する。一香は歌が上手い。カラオケスナックでバイトをしていると、色んなお客さんの歌声を聴くが、一香の歌はとても伸びやかで、透明感があって、優しくて、温かくて、美しい。褒め過ぎだと言われるかもしれないが、本当にその通りなのだ。
「こわーいものーなんてー」
一香の歌声を聴いていたら、何だか眠くなってきた。癒しと入眠の作用があるのか。和茶はそんなことを思いながら、弁当箱を空にして、そして……意識を手放した。つまり、寝落ちてしまった。和茶が次に目を覚ました時には、カラオケの終了時間が迫っていた。しかし、そんな時間になるまで、一香は和茶を起こさなかった。
「……ごめん、一香」
「バイトで疲れてたんでしょ?いーよ」
「……これで勘弁して」
そう言って、和茶は一香の唇にキスをした。カラオケの照明でも分かるほど真っ赤になった一香、悪戯に笑う和茶。いい雰囲気だったのだが、カラオケの終了時間を告げる電話が鳴ってしまった。和茶としては、キス以上のことをするつもりは無かったので、ガッカリはしなかったが。一香はそうでもないようだった。
こうして、和茶は一香に癒され、1人、天然のお化け屋敷<デッド・ハイツ>という自宅へと帰ったのだった。帰宅して、お札の貼られた鏡を見る。これ、いつまでこうしておこう。少しだけお札を剥がしてみると、何もおかしなところはなかった。しかし、怖いのでまた貼っておいた。和茶は格安の手鏡を買うことを決め、鏡を封印した。




