エピソード3:お盆の過ごし方 / 1
時は盆踊り当日。大学で出会った、年上の彼女・炎魔 一香とデートの約束をしていたその日の朝。和茶はバイト先からの電話で叩き起こされた。耳がキンキン、頭がガンガンする、特殊戦闘部隊の無線の会話のような、カオスな着信音にしておいたことを悔やんだ。和茶は不機嫌気味に電話に出る。予定していた起床時刻より随分と早い。
「はぁい、もしもし……飯山です」
(あ、飯山君?今から夕方まで入れる?)
「……誰が欠勤しやがったんスか」
(それが、飯山君しか対応出来ないお客様が来るのよー)
和茶にしか対応出来ない客とは、一体。和茶のバイト先は、カラオケスナック。昼間はランチの提供とカラオケのサービスを行っている。和茶しか作れないランチがあるわけじゃないし、何故に和茶は指名されたのか。とりあえず、断ってみる。今日の休み、その申請は随分前からしていた。しかし、バイト先の店長は引かない。
「てんちょー……俺が彼女にフラれたら責任取れるんスか」
(一緒に謝ってあげるわよぉ)
「……わーかりましたよ、時給2倍で手を打ちましょう」
これでバイトをクビにされても困る。田舎の両親からの仕送りは十分あるものの、基本的には自分のバイト代で生活している和茶にとって、今のバイト先を失うのは手痛い。バイト先からの電話を切り、すぐに彼女の一香にメールを送った。デート、夕方以降にズラしてもいい?というメールだったが、送った1分後に電話が掛かってきた。一香だ。
一香は電話向こうで拗ねているようだった。しかし、とことん私に付き合ってくれるなら夕方以降でもいいよ、と言ってくれた。内心、感謝しかない。




