エピソード2:塩分を求める死者 / 4
和茶は帰ろうか悩んだのだが、嶺想寺が特製カキ氷を作ってくれるというので、管理人室に上がることにした。嶺想寺のカキ氷機は業務用で、手動ならば様々なパターンのかき氷が作れるらしい。電動だと一瞬。嶺想寺と座敷童の少女を見ていると、若いお父さんと娘だ。そもそも、座敷童って「職業」だっけ?このアパートの「担当」と言っていた。
少しして、和茶の分のかき氷が出来上がった。パインシロップをたっぷり掛けた、パイン缶のパインが盛り付けられた、パインゼリーも入っているカキ氷。座敷童の少女と嶺想寺も、シャクシャクとカキ氷を食べ始める。そして、和茶は何故、管理人室に来たのかを忘れかけていた。しかし、嶺想寺の言葉で思い出した。そうだ、美嘉子のことだ。
「和茶君も座敷童に動じないくらいになったんですねぇ」
「……いや、その、動じる案件があって来たんですけど」
「ん?また咲田さん?」
「隣りの遠藤さんです……」
和茶は美嘉子のことを嶺想寺に話した。すると、嶺想寺は「なーるほどね。そうでしたか」と言って笑った。いや、そんな軽く流したりしないでくださいよ、と、和茶は言いたかったのだが、ゾンビか幽霊の人にビビって生首の人には対応出来るというのも、何だろう。パインのカキ氷が美味しい。頭はそのことでいっぱいになり始める。
どうも、嶺想寺といると調子が狂うというか。嶺想寺はカキ氷を食べ終え、定時なので帰りますです、という座敷童を見送りに玄関へ行った。嶺想寺の自宅である管理人室の壁を見ていると、何枚かポスターが貼ってあった。そのうちの1枚が和茶に苦い顔をさせる。「盆踊り」。このデッド・ハイツの住人は参加する……のか。
「お待たせしましたー、和茶君。カキ氷、おかわりいる?」
「カキ氷はもういいッス。それより、あの壁にある盆踊りって……」
「あぁ、うちの人たちは自由にしてますねぇ。一応、ずっと現世にいるし」
和茶は盆踊りの日、恋愛的な意味での「彼女」とデートの約束があるので、きっと踊らない。付き合ってそう長くない彼女と盆踊りデートというのは、少しヘヴィというか、彼女が希望しない限り選択しないのが無難だろうと思われた。結局、美嘉子のことは流されて終わったが、まぁ、仕方ないのかもしれない。だって、嶺想寺は……。
この天然のお化け屋敷の、謎多き大家。彼はきっと、和茶の知る以上の物事を笑顔で流してきているのだろうから。




