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おまけ17 元伯爵令嬢の末路4

ソルティアが修道院に送られる日、見送りに来たのはアスーナだけだった。父と義兄はいない。



「……お姉様だけだなんて、お父様もお兄様もお忙しいの?」


「それもあるけど……貴女の見送りに行きたくないのよ」


「……そうなんだ」



ソルティアはもう泣くこともなかった。もう十分泣いたからというわけでもなく、軟禁されてから会いに来てくれるのがアスーナだけだったことから何となく予想していたからだ。あの二人は自分を見捨てたのだと。


すでに全てを諦めたソルティアは抵抗すること無く馬車に乗り込む。そんな妹にアスーナは最後まで気にかける。



「ソルティア、仲のいい姉妹にはなれなかったけど……達者でね」


「お姉様……」



アスーナの顔には寂しさと悲しみがあった。大変な思いをさせられた妹でも姉としての愛情はあったのか、別れの時に悲しみが滲んでいるようだった。


ソルティアはそんなアスーナの心情に少なからず気づいてしまった。その直後、ソルティアも感情が溢れ出した。馬車から身を乗り出してアスーナのに向かって涙ながらに叫んだ。



「お姉様! ご、ごめんなさい! い、今までのこと……許してくれないけど、本当にごめんなさい!」


「――っ!」


「わ、私、反省する! 修道院で頑張ってみる! だから、ごめんなさい!」


「ソルティア……!」



突然のソルティアの謝罪、アスーナは非常に驚いた。今の今までソルティアがそんなことを、心からの謝罪の言葉を口にしたことがなかったのだ。ましてや涙ながらの謝罪などありえないと思っていた。


しかし、今確かにアスーナに向かって謝ったのだ。軟禁されてからソルティアなりに反省できたのだ、



「……――っ!」



アスーナも涙があふれる。激情が溢れて言葉も出ない。ソルティアのことは許せないが、かつては可愛がっていた妹だったのだ。今生の別れになるかもしれないと思うと悲しまずにはいられなかった。



だが、馬車はすでに動いている。二人の距離は大きく広がるばかり。遂には見えなくなってしまったが、二人の姉妹はいまだに見つめ合うかのようにしばらく固まったままだった。





ソルティアを乗せた馬車が人気の無さそうな道を走っていると、突如前方から不審な馬車が現れて道を塞ぐかのように止まった。


そして、不審な馬車からは下級貴族風の若い男達が武器を持って出てきて叫んだ



「ソルティア・ブラアラン! 出てこい!」


「……え?」



男の一人がソルティアを名指しで叫ぶ。名前を言われたソルティアは何事かと思って窓から顔を出すと、武器を持って叫ぶ男達が見えて驚いた。



「な、何なのっ!?」


「俺たちはお前とカリブラに人生を狂わされたんだ!」


「っ!?」



男の一人が叫んだカリブラの名前。カリブラと聞いてソルティアは男達に見覚えがあることに気づいた。彼らは、怒りと憎しみに満ちた鬼気迫る顔つきをしているが、全員カリブラの取り巻きだった貴族令息だった。



「俺たちはお前とカリブラのせいで貴族じゃ失くなっちまったんだ! 中には、重労働を課せられた奴や首をくくった奴もいる! 俺たちがそんな目に遭ったのは全部お前とカリブラのせいだ! 報いを受けてもらう!」


「っ!?」



報いを受けてもらうと聞いてソルティアは絶句した。彼ら取り巻きたちは逆恨みで復讐しに来たというのだ。



「そんな……どうして……!?」



何故そんな話になるのか分からないソルティア。彼女は知らなかったが、カリブラの取り巻きたちもカリブラに協力したということで罰を受けていたのだ。カリブラの計画が卑劣すぎることもあって協力した全員が罪に問われたのだが、それに納得行かないのが彼らだったわけだ。


自業自得のハズなのに。



「お前さえ、お前とカリブラさえいなければ! 俺たちは!」


「俺は嫡男だったのに、屋敷を追い出された!」


「俺は家ごと駄目になった!」


「婚約者にも見捨てられた!」


「パパとママに捨てられた!」


「「「「「お前とカリブラのせいで!」」」」」


「……!」



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