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おまけ13 元侯爵令息の末路5

気づけばカリブラは鉱山で働いていた。来る日も来る日も石を運ぶ作業の毎日を繰り返していた。



「…………」



なんでこうなったのかカリブラはもう覚えていない。いや、知らないという方が正しいかもしれない。裁判の経緯をカリブラは聞いていなかったのだから。





カリブラが正気を取り戻した頃には裁判はすでに終わっていた。そして、母マキナと会話して驚くべきことを告げられる。



「カリブラ、お前との親子の縁を切ります」


「は、母上!?」


「そして、もう二度とゲムデスの名を名乗ることを許しません。屋敷に入ることも許しません」


「そんな!?」



つまり、勘当するということだ。あれだけの映像を見せられてカリブラも流石に廃嫡くらいは覚悟をしていたが、親子の縁を切られるとは思っていなかった。幼い頃、あんなに可愛がられていたというのに……。



「母上! それはあんまりじゃないか! そんなことになれば僕はどうやって生きていけばいいんだ!?」


「どうやって? そんなの罪人として働けばいいじゃない?」


「え?」



罪人として働け。それだけ聞いてカリブラの顔は青くなった。裁判の経緯を途中から聞いていなかっただけに、結果が分かっていなかったのだが、予想していた中でも最悪の結果になったようだった。



「その顔は聞いていなかったのね? 本当にどうしようもない子……幼い頃に甘やかした結果がお前を捨てることになるとはね。それ以上に降格も痛いけどね」


「僕を捨て……降格?」


「我家は降格もされたのよ。侯爵から子爵にまで降格……取り潰しにならなかっただけでも良かったものよ」


「そ、そこまで……」


「それもこれも全部おまえのせい……お前は今すぐにスナープ領のレザ鉱山で刑期を終えるまで働き続けるのです」


「ええ!?」



スナープ領のレザ鉱山といえばこの国で最悪の不毛の地とされる。そんな場所で働かされるということは死ににいくのも同然だった。


カリブラは今初めて自分が死刑判決に近い罰を受けたのだと知って絶望し涙した。



「あ、あんまりだ……どうして、そこまで……」


「どうして? そんなの決まってるじゃない?」



マキナは自分の息子に向けたことが無いほど冷たい目つきで睨んで吐き捨てた。



「お前が罪を犯したから。お前が、彼女たちの言うように醜いくらい頭が悪くて最悪の男だったからよ。お前を産んだことは私の恥に相当するわ」


「そ、んな……ぼ、く、は……母上に、見捨てられるというのか……?」



実の母親に虫けらを見るような目で、アスーナ達に言われたことと同じことを言われて、カリブラは絶望のあまり気を失った。





そして、気づけば鉱山で石を運ぶ作業に明け暮れる毎日が始まったのだ。



「新入り! もっとキビキビ動け!」


「はい……!」



ここに連れてこられたカリブラは最初こそ反抗していたが、ここのリーダー格であるスノロク・ゼッパンという筋骨隆々の壮年の男にしごかれて泣く泣く働くことにした。そもそも、働かなけらば食べることができないため、結果は変わらなかったかもしれない。



「何故、僕が……いや、自業自得か……」



裁判の映像に映った自分の『醜い姿』を目の当たりにして、これまでの自分を見つめ直したカリブラはようやく自身の所業を反省するに至ったが、もう何もかも遅かった。迷惑を掛けた人たちに謝ることはおろか、刑期を終える前に生きていけるかも分からない、自分にできるのはなれない力仕事を続けることだけ……本当にもう遅い。



「は、ははは……これが何かの悪いドッキリであったらなぁ……」



今の自分の状況はドッキリにすぎない……カリブラは時折、そんな無茶な妄想をするのであった。







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