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第47話 妹の癇癪

アスーナの顔が赤く染まる。その理由は妹をカリブラに殴られたと知った怒りからではない。ハラドの男気のある気遣いに感動してのことだからだ。婚約者に触れさせないために代わりに殴るような貴族の男などどれだけいるだろうか。



「あ~、二人共~。イチャイチャしてる場合じゃないでしょ~? アスーナは殴られたソルティアが気になるんじゃないの~?」


「「っ!」」



呆れ半分面白半分なバニアの言葉にアスーナもハラドもハッとして気恥ずかしくなった。カリブラの話が本当ならソルティアは殴られ、今も侯爵家の屋敷の一室に閉じこもっているということだ。





とりあえず、カリブラたちを近衛兵に預けたあと、アスーナ達は教師に事情を伝えてからゲムデス侯爵家の屋敷に向かった。急な訪問になるのだが、妹を傷つけられたと聞かされたアスーナは流石にそれは大問題だと思ったからだ。



「アスーナ、流石に行動が早すぎるんじゃないか? 妹が心配なのは分かるが……」


「それでも、行かなくてはならないのです! ソルティアが大人しくしているはずがないのですから!」


「え?」



この時、ハラドは疑問に感じた。アスーナの言い方だと、ソルティアの身を案じているようには聞こえなかったのだ。そして、その疑問の答えはゲムデス侯爵家の屋敷に着いたあとで分かる。





ゲムデス侯爵家の屋敷に押しかける形になったアスーナたちだが、ゲムデス侯爵夫人マキナはすんなり受け入れた。驚くほどやつれきった顔で。



「アスーナ嬢……! 我が屋敷に来た理由はこの際どうでもいいわ。とにかくあの娘を引き取って頂戴! もう、私達の手に余るのよ!」


「マキナ様……」



カリブラの性格のせいでもあるのか強気な印象を持っていたマキナが泣きそうな顔で弱音を吐く姿に、ハラドは驚きアスーナは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



「あの娘、カリブラに殴られて部屋に引きこもったかと思えば……カリブラが学園に行ったのをいいことに前にもましてやりたい放題なのよ! 殴られた痛みのことで癇癪を起こしたみたいに!」


「……やはりそうなりましたか」


(暴力沙汰にまでなったと聞いて駆けつけたけど、嫌な予感が的中したわ。あの子が殴られて大人しくしているはずがないもの……)



アスーナとソルティアの父ノゲムス・ブラアラン伯爵は、一度だけソルティアの我儘に怒って頬を引っ叩いたことがあった。そのことで癇癪を起こしたソルティアは屋敷中で暴れまわるという事件を起こしたのだ。



「申し訳ありませんマキナ様。妹が多大なご迷惑をおかけしまして、」


「アスーナ嬢! 謝罪はいいからあの娘をどうにかして!」



マキナは夫人らしからぬ悲痛な叫びを放つ。だが、その叫びを聞いたのはアスーナ達だけではなかった。



「お姉様!? お姉様が来たの!?」


「――っ! ソルティア!?」



姉がやってきたと聞いたソルティアがアスーナ達の前に現れる。だが、それは普段のソルティアではなかった。鬼の形相で衣服は破れ、手に金と宝石を持って裸足であったのだ。




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