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第36話 煽りまくり

「あらら~、これはこれは仲睦まじいと噂されるカリブラ様とソルティア様ではありませんか~?」


「げっ、お前は……!」


「何? 今忙しいんだけど?」



カリブラはバニアに気づくと嫌そうに顔をしかめる。カリブラは先日煽られたことでバニアに嫌な印象を持ったばかりであり、ソルティアもバニアの口調だけで嫌そうな気分になった。



「流石は愛し合うお二人……こんなところで愛を込めた口喧嘩とは愉快なことですね~。見てて面白いですわ~」


「はぁっ!? 愛し合うだと!? ふざけんな!」


「何言ってんのよ! そんなわけないでしょ! 見世物じゃないのよ! あっちへ行って!」


「息ピッタリ~、本当に気が合うのですね~」


「「ち、ちがっ……っ!」」



互いに違うと言いかけて、それが重なりそうになって言葉をつぐむ。そして、悔しげにバニアを睨むカリブラとソルティア。またカリブラを煽り始めるバニアのことをアスーナは心配になったので諫めることにした。



「……バニア、流石にこの二人にはもう、」


「大丈夫、バッチリ対策もしてるから」



あっけらかんとした態度のバニアにアスーナは不安で頭を抱えそうになる。案の定、カリブラとソルティアは激情の矛先をバニアに向けた。



「アスーナの腰巾着が! また僕を馬鹿にしに来たのか! お前のせいで僕は大恥をかいたんだぞ!」


「もう一度言いますけど、自業自得ですよ~。ドッキリしかできることのないお坊っちゃま?」


「クソーっ! また馬鹿にしやがって!」



バニアにバカにされた怒りで物理的に地団駄を踏むカリブラ。それでもバニアはニヤニヤした笑みを浮かべ続ける。そんなバニアが気に食わないソルティアもバニアに煽られるのである。



「ソルティア様~、愛しのカリブラ様がバカにされてるそうですけど~?」


「何なのよその言い方! 馬鹿にしてるみたいで腹立つんだけど!」


「おや? ソルティア様は頭は空っぽで有名だと聞いてましたのによく気づかれましたね~。珍しくお勉強頑張ったんですか~?」


「はぁっ!? この私が馬鹿ですって!?」


「愛しのカリブラ様もそう思っているそうですよ~?」


「当たり前だ! ソルティアの馬鹿は今に始まったことじゃない! っていうかこんなやつを愛せるもんか!」


「どいつもこいつも馬鹿にして!」


「「…………」」



見事に煽られるカリブラとソルティアは冷静な判断ができそうにないようだ。人目も気にせずに激しい怒りをバニアに向ける。そんな光景をアスーナとハラドはハラハラした様子で見守る。



「バニアは大丈夫って言うけど、やっぱりもうそろそろこの辺で……」


「いや、確かに対策はしているようだ」


「え? どういうことですの?」


「俺には分かる。彼女にも『陰』がそばにいることがね」


「――っ!」



ハラドの言う『陰』とは、守るべき対象を密かに護衛する存在だ。アスーナにも『陰』がいるのだが、それはハラドの公爵家の権限があってのもの。伯爵令嬢のバニアがそのような存在をそばに置けるというのかアスーナには疑問だった。


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