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第33話 妹の住み込み

ソルティアはカリブラに頼み込んで侯爵家に住むことになったのだ。何でも『婚約したのだからいいじゃない』とのことでカリブラも承諾した。流石に侯爵家の夫人はおろか父ノゲムスも大反対だったが、ソルティアが泣き出したりカリブラが怒ったことで仕方なくソルティアの住み込みが決まった。



「ソルティアったらね、『お父様は私が可愛いから侯爵家に行くのが嫌なのね!』とか『娘が侯爵家との縁を繋ぐ努力をしているのに邪魔しないで!』とか言って駄々をこねたのよ。挙げ句にはカリブラ様まで『我が侯爵家なら伯爵家ごときよりも裕福な生活ができるのに何故ソルティアの言葉を聞けないんだ!』とか言い出すから……」


「婚約したから男の方の屋敷に移り住むなんて中々聞かないわ。そもそもアスーナはそんなことなかったのにね」


「私だったら嫌よ。カリブラ様と一緒に住むなんて……」


「っていうかさ、侯爵夫人って厳しい人なんじゃなかったの? 『嫁入り前の伯爵家の娘を居候させるなんて』とか言い出しそうだけど?」


「喚く二人に押し負けたみたい。怒り狂う息子とその婚約者の娘が泣き叫ぶとなれば変な噂が流れると思ったんでしょう」


「……つまり諦めたわけね」



同じ伯爵令嬢でもバニアはアスーナよりも社交界で顔が広い。カリブラの母のマキナ・ゲムデス侯爵夫人が厳しい人柄であることも父の侯爵が病弱であることも知っているほどだった。



「お父様も侯爵夫人も最悪って顔をしていたわ。お父様はソルティアが侯爵家に迷惑をかけるだろう確信しているからね……」


「その一方で侯爵夫人も我儘な娘を引き取ることになって憂鬱な気分だったでしょうね」


「お父様も侯爵夫人も自分の子供に甘いところがあるから……でも、ソルティアはもうそろそろ追い出されるかもしれないわ。侯爵家からお父様あてに苦情が来てるし」


「でもカリブラって馬鹿なくせに変なところでプライド高いでしょ? 一度決めたことを女絡みで捻じ曲げるかしら?」


「そうなのよね。もしかして馬鹿をこじらせて私に文句を言い出すかもしれないわね。あの人、面倒事を私に押し付ける癖があったから……」



そこまで言ってアスーナは嫌な予感がした。口に出した途端に何やら悪寒を感じ取ったのだ。カリブラは事あるごとにアスーナに面倒事を押し付ける癖がある。それが治っていなければ、きっともうそろそろ自分にソルティアのことも何とかしろと言ってくるに違いない。



(……もしかしたら侯爵夫人か他の人に押し付ける……いや、多分押し付ける相手に真っ先に私のことを思い浮かぶはず……あの男からしたら私は都合のいい女なんだし……)



カリブラのことを考えただけで嫌な気持ちになるアスーナは、気持ちを切り替えるためにカリブラと婚約破棄したあとのことを思い浮かべる。


ハラドと婚約してからアスーナの日常は大きく変わった。それというのもカリブラが婚約者だった頃にはされなかった気遣いやプレゼント、紳士的な対応をされて人生で感じたことのなかったと思うほど幸福を感じていたのだ。

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