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幼馴染がアイドルやめた  作者: 桜井正宗


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13/21

二人のアイドル

 このままだと周囲の人間が殺到しかねん。

 大事になる前に俺は、楓の手を引いて駅を後にした。


 ……ふぅ、なんとか撒いたな。


「危なかったな」

「変装しても気づかれちゃうなんて」

「ファンの目は誤魔化せないってことかね」


 道路を歩き、とにかく人気のない場所へ急ごう。


「そこの公園にする?」

「そうだな。そこならそんなに人も――って、危ない!!」


 いきなり軽トラが突っ込んできやがった。俺は楓を抱えて(かわ)した。……あっぶね、危うく轢かれるところだった。

 ていうか、わざと突っ込んできていなかったか!?


 軽トラは逃げるように去っていく。


 なんだったんだ?


「び、びっくりした」

「楓を狙っていたのかな」

「まさか……」


 やはり、楓は狙われやすいようだな。俺がしっかりしないと。


 公園に入って、空いているベンチへ座った。


「……今日は楓がいなくて退屈だったよ」

「そう言ってくれて嬉しい。わたしも同じ気持ち」


 自然と見つめ合うような形になり、俺はドキリとした。……ヤバい。楓が可愛すぎて胸が辛い。


「と、とにかくこの事態を収める方法を考えないとな」

「アイドルを引退するしかないと思う」

「それしかないよな」

「うん、いいの。湊くんと一緒になれるのなら、惜しくない」

「ありがとう。じゃあ、秋までがんばるしかないか」

「そうだね。共に力を合わせて乗り切ろう」


 今できることをしていこう。

 それしかない。


 その後、少し雑談も交えて今後のことを話した。


「ああ、そうだ。今度、どこかへ遊びに行かないか?」

「いいね。デートしよっか」

「デ、デート!?」

「うん。してみたいから」


 まさかのデートのお誘いだと……!

 断る理由なんてない。

 俺は即返答した。


「分かった。デート、しよう」

「やった! 決まりだね」


 そんな和やかな空気の中だった。

 茂みの奥からガサガサと音がして、俺はビックリした。


「な、なんだ!?」


 驚いて様子を見ていると、そこから人間が姿を現した。男だ。



「……やはり、ここでしたか」

尾道(おのみち)さん……」


 楓がその名を口にした。

 どうやら知り合いらしい。

 誰だよ、このイケメン。


「安楽島さん、そろそろ帰らないと」

「も、もう少しだけ……」

「ダメです。社長との約束でしょう」


 楓の腕を掴む尾道とかいう男。

 俺はその強引な行為にムッときた。


「楓が嫌がっているだろうが!」

「なんだ、君は……?」

「俺は、東山。楓とは同級生なんだ」

「それで?」

「そ、それでって……。手を離せ」

「君は関係のないことだ。早々に立ち去れ」


 鋭い目つきで俺を睨む尾道とかいう男。なんだ、この自信満々な目つき。気に食わねえ。


「断る」

「断る? 馬鹿かい、君は。僕はね、この安楽島さんの専属の運転手なんだよ。仕事の邪魔をしないでくれないかな」


 そういう関係か。


「尾道さん、わたしと湊くんは大丈夫です。それに、歩いて帰りますから」

「そういうわけにはいきません。最近、物騒な事件も多いですし」


 楓は明らかに嫌がっていた。

 なら俺のやるべきことはひとつ。


「やめろと言った」

「……貴様、僕の邪魔をしたいようだな。だが、貴様のような一般人には何も出来ない。所詮、アイドルと一般人では天と地の差がある。そうだ、貴様に彼女は相応しくない。消えろ!」


「なら、こうするしか!」

「なんだ、暴力か? そうかそうか、一般人は直ぐ暴力で解決しようとする。なんて野蛮……! けどな、僕を殴れば直ぐに通報して警察に突き出してやるからな! 覚悟しておけ――ごふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 突然、尾道の顔面がグニャグニャに曲がると、ヤツは地面に何度も体を打ちつけて飛んでいった。


 ……お、俺じゃないぞ。


 確かに、ちょっとグーは出そうになったけど抑えていたし。


 いったい、誰が?


「え……楓が?」

「ち、違う。わたしじゃないけど……あれ、まさか」


 俺は自分の目を疑った。

 目の前には、楓が“二人”いたのだから。


 な、なんだこりゃ……!

 楓が分身してる!!


「まったく、お姉ちゃんは相変わらず変なヤツに絡まれやすいんだから」


 呆れた口調で、その楓は……いや、違う。

 彼女はまさか、噂の妹さんでは!



風花(ふうか)! なんでここに!」



 やっぱり妹さんか!

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