開戦
「ヴィレント山脈及び海岸線に配置している歩哨からの報告です! ベルガール要塞からオルレアン帝国の軍勢四万が出陣し、海岸線へ向けて行軍中とのこと!」
「「「「っ!?」」」」
兵士の報告に、僕達は息を呑んだ。
「っ! それで、ヴィーヴィルの姿は!」
「い、今のところベルガール要塞から飛び立ったという情報はありません」
「そうか……」
とりあえず、オルレアン軍は地上戦を仕掛けるつもりだろうけど、ヴィーヴィルがいよいよ実戦投入されるのは間違いない。
そうでなかったら、今まで膠着状態だったのに軍を動かす理由がないからね。
「それで、タイラン将軍は?」
「イルハン千人長を先陣として、一万の兵で海岸線へ進軍するとのことです! そして……シドニア将軍にヴィレント山脈からの砲撃を、ノリエガ将軍にはセバスティオの防衛をお願いしたいとのことです!」
「僕達に、か……」
タイラン将軍め……そんな重要拠点を僕達に押し付けるなんて、なかなか思い切ったことをするな。
だけど、大砲や新兵器の運用に関しては、間違いなく僕達エルタニアの人間のほうが上。彼の指示は、勝つことを第一に考えるなら最も正しい。
本当に、敵には回したくない指揮官だよ。
「分かった。その任務、このベルトラン=シドニアが確かに引き受けた」
「無論、このエドガルド=ノリエガもだ」
「ありがとうございます! では、その旨をタイラン将軍に伝えてまいります!」
そう言うと、兵士は一礼して大急ぎで練兵場を出て行った。
「さて……僕達もこうしちゃいられない。ペトロナ技術中尉はノリエガ将軍の補佐として、新兵器の運用に当たってくれ。僕とカサンドラ准尉は、今からヴィレント山頂へ向かう」
「分かったよ!」
ペトロナ技術中尉が、真剣な表情で敬礼をした。
「ノリエガ将軍」
「うむ」
「このセバスティオと、ペトロナ技術中尉を頼みます」
「わっはは! 任せよ!」
ノリエガ将軍は豪快に笑い、ドン、と胸を強く叩いた。
「それより、ベルトラン君とカサンドラ君も……って、これは言うまでもないな」
「もちろんです。僕達は、この時のために準備をしてきたんですから」
僕とカサンドラ准尉は顔を見合わせ、力強く頷く。
「では……行ってきます!」
「うむ!」
ノリエガ将軍と拳を合わせると、僕達は練兵場を出てヴィレント山脈へと向かった。
◇
「デルガド大尉、すまないな。どうやら今回の戦闘では、竜騎兵としての出番はなさそうだ」
竜騎兵一千を伴ってヴィレント山頂へ向かう途中、デルガド大尉にそう声を掛けた。
「ハハハ! 竜騎兵は砲術に関してもエキスパートですよ! むしろ、新兵器のお披露目を俺達が担うなんて、最高じゃないですか! なあ、みんな!」
「「「「「おおおおお――――――ッッッ!」」」」」
デルガド大尉の檄に、竜騎兵達が一斉に応えた。
うん、さすがはサン=マルケス要塞が……いや、エルタニア皇国が誇る最強部隊、覚悟も士気も普通の部隊と比べて桁違いだ。
「それと……カサンドラ准尉」
「はい」
「今回の戦闘……いや、飛竜隊の殲滅には、君のその目こそが勝利の鍵だ。だから……頼んだぞ!」
「お任せください。私が、絶対に正確に測ってみせます」
僕の期待を受け、カサンドラ准尉はその小さく薄い……いや、ヴィレント山脈の岩肌よりも絶壁な胸を、強く叩いた……って!?
「いたたたた!?」
「……ベル君。考えてること全部、その口からだだ漏れやで」
「ゴメンナサイ」
思いきり耳を引っ張られ、僕は思わず声を上げる。
だけど、いつも被っているカサンドラ准尉という仮面の下から現れた鬼の形相を見て、一瞬のうちにサンドラの前で土下座を敢行していた。
「ホンマにもう……もうちょっと真面目にして」
「はい……」
「ハハハハハ! こんな時でも二人は変わりませんな!」
「「「「ハハハハハハハ!」」」」」
デルガド大尉や竜騎兵のみんなに大声で笑われ、僕は頭を掻く。
仮面を被り直したカサンドラ准尉は、表情こそ変えないものの、プイ、と顔を背けていた。どうやら僕と同列に扱われたのが気に入らないみたいだ。
だけど……うん、僕達の雰囲気は普段と変わらない。
これなら、変に気負って失敗することもないだろう。
そうして、僕達は意気揚々と山頂へと歩を進める……って。
「そんなに心配せんでも、私達はいつもどおりやよ」
「あはは……」
やっぱりサンドラには、僕がわざと冗談……いや、事実か。いずれにせよ、彼女には全部お見通しというわけだ。
まあ、だけど。
「僕は、ちっぱいが好きだよ」
「っ! もう! ベル君のアホ! エッチ! スケベ!」
「げぼあっ!?」
せっかく褒めたけど、顔を真っ赤にしたサンドラにポカポカ……なんて生易しいものじゃないグーパンを鳩尾にもらい、悶絶した。
そして。
「竜騎兵一千、全て配置に就きました」
タワイフ軍とオルレアン軍の戦端が開いた海岸線を眺める僕に、カサンドラ准尉が報告した。
「そうか……では、我々も始めるぞ!」
その言葉を皮切りに、オルレアン軍の後方へ向けて従来型の大砲による砲撃を開始した。
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