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夜遊びと事件と催促

「俺が夜遊びしてるっていったらどうします?」


「お前が?」


先生、は、目を丸くしてから吹き出した。


「ないない! お前が? 無理だろ、想像出来ない……くくっ、ふ、ははっ! いや、まて、笑う」


笑い始めた。

笑うのは笑うので失礼だけど意外な一面だ。


なんだか腹が立ってきた。


「あんたの失態小松菜先生に言いつけます」


「ちょっ。小松菜先生はないだろう?」




俺は無視した。




家に帰ると、どさっ、と玄関に座り込んだ。

ああ、疲れた。ほんっっと疲れた。そう吐きだしながらも、頭のなかはひたすらにごちゃごちゃしている。


疲れたわりには昼間に寝たせいで眠気がやってこないので、余計にいらついた。

こんなつもりじゃ、なかったのに。


携帯に電話が来ていたのでかけなおす。



「冬至くん、なになに?」


軽い挨拶のあとで彼は、言う。


「――お前平気か?」


と。

何がと思いつつ、あまりいい予感はしていなくて、このまま電源を切りたくなった。


「なんつーか、学校にしょうもないイタズラするやつが居るみたいで」


「はあ」


「今日放課後何人かが、バナナの皮で転んだりしてさ……」


「はぁ!?」


「あ、お前、早退したんだっけ」


「そうだけど。なんかあった?」


「教科書出した女子の、その教科書からいかがわしい写真が出てきたりして、その18禁が喜居の持ち物らしく、宇宙中たちが口論になって殴りあいになった」


「……はあ」


 あいつら、暇なことしてんな。


宇宙中たちは少し喧嘩っ早いので、ちょっとなにかあると仲良く取っ組み合っている。


「救急車呼ばれちゃって。すごいサイレン鳴ってさ……ほら、お前って、確か」


救急車、の言葉にぴた、と身体がかたまる。「サイレンとか、苦手だったよな」


なんで、そんな、話……今日終わったなら、もう関係ないのに。


「それが、どうも誰かが居たみたいで、今回『は』宇宙中でもなかった感じ」

『は』の強調に、信用のなさがうかがえる……


「学級会やら犯人探しはしてないけど、ピリピリしてて、また救急車とかになるかもしれないだろ。だから」


「そうか、ありがとな」


嬉しい話でもないのに、俺は心にもない礼を告げると電源を切る。


……すぐ電話が鳴った。

「ちっ」


通話ボタンを押してすぐ聞こえた声。


「なあ、どうしたらいい?」


緋見矢 天園(あまぞの)。自称天才。

その実態は……まあいいや。

「どうしたらいいかは、自力でひねり出してこその天才だろ?」


 まぁいわゆる、指示待ち人間ほぼ最終形態。

困ったことがあると『恋人』やら『周りの人』からアドバイスをもらうためだけに人に好かれようとしているふしがある。

「あの喧嘩俺もヤッたんだ。でも、このままじゃ謝罪じゃんか。いい知恵なくて、困るよ」


知恵っていうなら謝罪に行けば良いのに。


――そう、周りを利用することに関しての、

天才。

見た目や財力で補っている。みんなには内緒だ。

「この前も、レポートは一緒に出すから声かけてねっつったのに」


電話口の声にはため息をつきたくなった。なんで個人のレポートで、いちいち天才様に声をかけなきゃならないかというと……だいたい察せられると思う。


こいつはいつもいつもいつも、そんなことで、俺に声をかけたがる。

「いいレポートはそれに見合う催促でできるっつってね!」


――今度から催促の緋見矢って呼ぼうか……

こういうことばかり言う。言葉遊びが好きなのかもしれない。


「俺じゃない誰かに催促すりゃいいだろ」


だってえ。緋見矢はぐちぐちと文句を垂れ始めた。

「俺以外もやってんのに、いくらか逃げてさー。せっかくならどうにかしたいじゃん。それでチャラ、みたいなー?」

「頑張れ、催促の天・才・さん」

「今度は一緒に提出しようね? 事前に言って?」

世界よ。これが催促の天才だ。

「怪我したのは誰?」

「宇宙中たち!」

「あっそ、興味ないわ」


 またすぐ、どこかで誰かが催促の転載に催促されるんだろうが……

俺にはどうもならない。





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