リリア入学前・2
父が死んでから、手先が器用だった母は刺繍や縫い物、レースを用いた装飾品を作り、生計を立てている。服飾店に卸すのが基本ではあるが、一部の貴族の方にも好評のようで、舞踏会やお茶会等の集まりがある様な時は、直接注文が集まる。
当然、私も材料の仕入れや作業の一部を手伝ったり、納品時に母に付いていったりしていた。
ご贔屓さんの中には、私にお菓子をくれたりする人もいて、納品の時は結構楽しみであったりする。
生活は贅沢には暮らせないけれど、母1人子1人でも慎ましく暮らして行けるくらいには何とかやりくりしていた。
とはいえ、母にもう少し良い生活を送ってもらいたいと考えている私は、魔法を販売する店を自分で開いてお金を稼ぐことを目標としている。
魔法は、魔法店で買える。
例えば、物を机の端から端まで移動するというささやかな魔法でも、1から魔法を生み出すことは難しいし、時間もかかる。
そこで、人々は便利な魔法を魔法店から買うことにしている。
ほうきを動かして掃除をする魔法、水と石鹸を組み合わせて洗濯する魔法等生活に直結する魔法もあれば、魔物退治に使うような攻撃魔法も存在する。
それぞれ魔法には、生み出した魔法使いの印が刻まれており、生み出した者はそれを販売することができる。
ただし、売れる魔法を生み出さない限りは魔法店は儲からない。
なので、私は毎日こうして魔法を練っては試しているのである。
魔法の事を考えるのは好きだ。魔法の組み合わせや強弱、新しい構造を日々考えるのは楽しい。母の手伝い以外はほぼずっと、魔法の事を考えていられるくらい好きだ。
さらに、学校にいけば公的教養魔法を学べる。
例として「ボウ」の様な火や水、風といった属性魔法や、回復魔法等も教えてもらえるのだ。
ちなみに、私はボウの魔法は必要性が高いので、小さい頃に母に買ってもらった。火は生活する上で良く使うし、公的教養魔法だからお安い。
国が売り主となっているからだ。
学校に行けば魔法の幅を広げられるし、学校で良い成績を取れば、お店を出すとき信用も増すはず。もう努力するのみである!!
母を1人置いていくのは心配だけど、母は社交性もあるし、いざとなればご近所さんが助けてくれるだろう。
私も頑張ろう…と考えたところでぷつんと眠りに落ちた。