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リリー22 (十六歳)

 


  階段事件で休学していたけど秋休みが迫っていたので、結局そのまま皆でダナー(おうち)に帰ってきた今現在。


  お兄様たちはそれぞれの領地の見回りに忙しく、警備員たちも同じ様な理由でとっかえひっかえ居なくなる。


  暇なのは、いまだに念のためだと首にむち打ちギプスを巻かれている私だけ……。


  (孤児院の視察は終わったし、家庭学習テストも取りあえずクリアしたし…。散歩も飽きたし、街には出てはいけないし…。ふーーむ……)


  回想と共に視界に映るのは、我が家では見慣れた広大で殺風景な窓の外の自然風景。そして本日の護衛はイケメン・ローデルートさん。


  にこっ!


  「……」


  窓越しに目が合ったので、笑顔のコミュニケーションでゴマをする。うっすら返ってきた紳士な笑顔に、親密度アップの手応えを感じる私。


  ローデルートさん。


  彼はお兄様ズの次に私の推しである。


  ただ単に彼の場合、従兄弟なので上のお兄様に似て安心感があるという、身内びいきな一票なのだけど。


  でも気をつけなければいけないのは、ローデルートさんは私よりも上の兄貴が大好きで、なんでもかんでも余計な事までグレイお兄様に報告してしまうところがあるんだよね。


  (何故か学院行く前に、グレイお兄様に胃腸薬を強く勧められた事がある。なんでってしつこく問いつめたら、ローデルートさんから報告受けたって自白した、謎の胃腸薬押し付け疑惑)


  きっとお兄様と長く会話したくて、私のちょっとしたおやつの食べ過ぎまで報告しているよね、彼。


  そこに私は、勝手にビーエルタグを張り付けている。


  グレイお兄様(受)VSローデルートさん(攻)。


  彼らを邪な目でみている不純(ひま)(わたし)


  「……」


  それはそうと、パピーとマミーは、もう学校に行かせたくないって騒いでいたけど、安心してほしい。


  私、悪役の役目をきちんと果たし、

  今まさに、生還しているのであります!!


  これってつまり?


  もう脱・悪役したんじゃない?


  振り返ってみてみると、ゲームの場面的には地味な悪役ざまあ展開、階段からのドンだったけれど、現実ではかなり大事だったよね。


  突き飛ばされた私だって、過去の走馬灯まで夢見たんだし。セオさんに怪我まで負わせたのだし。


  本当に、打ち所が悪ければやばかったんだ。


  セオさんが居なければ、マジでやばかった。


  そんなこんなで生きてる私って、これってやっぱり、悪役回避したんじゃない?


  それに私が居ない休学中に、主人公はグーさんとしっかりくっついて、邪魔者(あくやく)が居なくなった現在、アフターエピソードしてる頃だよね。


  グーさんといえば、我が家(こっち)に帰ってきてから探してみた、洗濯場の女性グーサンは、体調不良でお暇を頂いたらしいけど…。


  よく考えたら、ダナー(うち)に簡単に入り込んだあのグーサンて、ちょっとやり手で怖いよね。実はすごく危険だったのかも。


  やり手なら、いつだって私のこと、暗さ……。


  ……。


  ぶるっ!


  気を取り直して! 明るいこと考えよう!


  まずはピアンちゃんのお家騒動が落ち着いたら、今度は冬季休暇でうちに遊びにおいでよってご招待してみたい。


  ピアンちゃんの恋ばなとか聞いたり、お泊まり会とか、パジャマパーティーもここではしたことないから誘ってみよう。


  それから脱悪役したんなら、残りのライフポイントで、過去世で出来なかった彼氏作りとか、今から学院で頑張ったっていいわけだよね。


  初彼氏と、二人で公園デート……。


  ……テレる。


  あのフルーツ飴、二人で食べちゃう?


  きゃっ!


  しかも春になったら、待ちに待った十七歳がやって来るよ。


  三段重ねのケーキへのこだわりはね、過去世で出席した従姉妹のお姉さんの結婚式からなんだ。


  スペシャルな三段重ねに入刀されたケーキが、細く小さく一切れになって自分のお皿にたどり着いたショックで、お姉さんへのイメージが悪くなった悲しい思い出。


  それは当時園児だった、私のケーキに対する初めての悲しみ。今も根深く心に刻み込まれている。


  だからお金に不自由の無いお城の子供に転生して、寝転がって天井を眺めていたベビーの頃に、これを思い付いた時は小躍りしたよね。


  でも大きくなっても、一向にバースディケーキに三段重ねは現れなかった。


  異世界特有の飾り細工のおしゃれな平たいケーキばっかりで、重ねてねってお願いしても、説明が上手く出来なくて二段重ね止まりだった幼少期。


  だからこそ、であるならば、これは十七歳の記念日まで取っておこうって、心に決めていたんだ。


  誕生日にでっかいウェディングケーキ一人占めって、過去世の私では考えられない贅沢三昧。


  ふかふかの焼きたてスポンジケーキの間には、様々なフルーツと生クリーム。全体的にほんのりピンク色の苺クリームをコーティングして、芸術的センスでドレスのように砂糖菓子と生クリームをトッピング。


  朝から胃袋に飯を入れずに準備する。


  入刀なんかしないで、上層部からお肉用のでかいフォーク突き刺して食べるつもりで待っている。


  でも誕生日会場ではさすがに皆見てるから、シェフに直接注文して、こっそり自室に用意してもらうという計算もしっかりしているの。現在世のファミリーは、何かとマナーに厳しいからね。



  完・璧な計画だ。



  もしかして私、このために転生してきたんじゃない?


  三段重ねケーキが叶った暁には、次は転生せずに、大人しく成仏出来るかもしれない。


  それがもうすぐ近づいてくる…。


  次は冬学期、そして春学期に私の誕生日はやって来る。そんな野望を心に秘めつつ、ギプスの取れた私は再び学院に通い始めた。


 

 

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