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リリー14 (十六歳)

 


  黒色メンバーズと学食の隅を牛耳って、今日も旨いメシを頬張る。


  すると一人の深緑が近寄ってきた。


  なよなよっとした仕草。もじもじっとした話し方。だけど背だけは私よりも大きい。

 

  モデルみたいにスラリとした長い手足に高い身長。それなのに俯いて下を向いて歩いていたから、昨日一般の悪役に目をつけられて絡まれていた彼女。


  上から目線で私が余計な意見してあげた深緑さん。


  見るからに引っ込み思案の彼女は、勇気を振り絞って黒色の集団、警備員に囲まれている悪役の私に声をかけに来た。


  「お名前は?」


  「あ、………………、ピア……、です、」


  「…………」


  やっぱりもじもじ、ぼそぼそしてる。そしてあんまり聞こえなかった。


  「ピアン?」


  顔が真っ赤になって俯いた。しょうがないよね。いきなり癖なんて直らないよね。


  でもこのピアンちゃん、一般人を寄せ付けない、警備員の分厚い壁を突破してやって来た勇気はすごいことだと思う。


  グーさんだって、ご飯一緒に食べようって極たまにしか言ってこないのは、うちの黒色メンバーズがブロックしているからだと思う。


  そういえば、グーさん。なんで婚約破棄してこないんだろう? 今でもけっこうお誘いお断りしたり、失礼な態度とってるのに。


  四番目だけど念のため、王族とは距離は置こうと思ってるのに、いまだに定期的に誘ってくるよね。お茶とか。


  しかも変なあだ名で呼んでたの受け入れてるし。


  やっぱりグーさん、


  マゾヒス「……あの、これ、」


  「何かしら? …これは、招待状?」


  まさか私に、自分のお家に来てって、誘いに来てくれたの?


  小走りに逃げたピアンちゃん。


  お家に来てってことは、お友達になってってことだよね?


  警備員たちも、彼女のご招待はいいんじゃないの? みたいな意見。


  それってつまり?


  初めてのお友達のお家への訪問が決まった。


  これは、夜は興奮して眠れないかも。


  ムフフッ!!


  「あれ?」


  喜びの最中、食堂から見える中庭に、なんか目立つ学生を発見した。紺色制服、しっかりした体型。うちの警備員にも負けない雰囲気の威圧感。


  紺色であの威圧感は初めて見たかも。


  まさか。


  『番長…?』


  「あの者に、何か?」


  学院内で、私が移動のたびにきょろきょろと誰かを探していることは警備員たちにお見通しなので、彼の情報を聞いてみた。


  「サイオス・カレン。エルドラード侯爵家の跡取りです」


  王族関係者の一人らしい。精悍な顔立ち。部下と思われる紺色たちが周囲を取り囲む。


  (怪しいけど、様子みようかな…)


  乗り込んで行って、番長じゃなかったら私がヤバい。


  そんな感じで観察していたら、私の背中はがら空きだった。この油断がいけなかったのかも。金髪ふわふわのヒロインが、思ったよりも近くに居たのに気づかなかった。


  振り返ってみてぎょっとした。


  「……」


  (ヤバい。この前より至近距離。しかもやっぱり、めっちゃこっちを睨んでる)


  敵意むき出しのふわふわ。でも私、あなたと積極的に、関わるつもりは全然ないの。


  学食から逃げようと、さりげなく必死に移動する。平静を装い、スタスタと早足で自然に退出。


  「…?」


  やり過ごしたと思ったふわふわヒロイン。だけど彼女の後ろに、ある違和感。


  「?」


  ヒロインのグループの中に紛れていたのは、過去世の学校で出会ったことがあるかもしれない顔立ち。

 

  (でもきっと、知り合いじゃない。見たこと無い人)


  目鼻立ちがくっきりとした顔立ちが多い転生先。家族の一族だって王族だって、割りとはっきりしてる顔かたち。そして色んな人種が混ざってる、この学校の生徒の中にはシンプル顔の人達だって居るが、なんか違う。


  みんな現在世の人だって分かるのに、あの人だけ、制服は着ているけど違和感に浮いている。


  『あれって、リリーじゃない?』


  「!!」


  今のって、この国の言葉じゃない。


  あれって、過去世で私が使っていた言葉。


  目と目があった、死のフラグ。


  そこから、私は青くなって逃げ出した。


 

 

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