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14

 


  「また来たんだってさ、王子様からの手紙」


  「お可哀想ねぇー、クスクスッ」


  忙しく動き回る厨房、洗濯場、侍従たちの休憩室まで、その噂は広まっている。


  定期的に届く、返信の返らない第四王子からの手紙。受けとるリリーが燃やしていたことが発覚すると、今では一族で第四王子を憐れだと笑っていた。


  「そういえば、あれからお姿を見ないわよね」


  「いくら王様の許可を得たって、お嬢様に婚約者だと認めてもらえなくて無視されてるなんて、格好悪くて顔出せないだろ?」


  「馬鹿ね、わざと言ったのよ。だって第四王子って、あの左側(アトワ)の血が、半分混ざっているんだから、うちのお嬢様を婚約者だなんて、図々しいわ」




 **



 

  「おや?」


  「?」


  いつも無言で眺めてから、くるくる丸めて暖炉に放る。第四王子からのしつこい連絡に、同じ男として憐憫と嫌悪を感じていたメイヴァーは、珍しく長考のリリーに注目した。


  『学園ライフ・・・』

 

  「?」


  リリーは、聞き取れない言葉をたまに口にする。護衛の一人が興味を持ってそれに注目したことが過去にあるが、何語かも分からず、自分で再現が出来ないらしい。


  「ふーん…」


  「どうされたのですか?」


  「そうだ、メイヴァー様って……」


  「?」


  「なんでもない。やっぱりいいわ」


  言ったリリーは手紙を燃すために暖炉の間には行かず、それを手にしたまま寝室へ移動し再び応接間に戻ってきた。


  その手には、あの手紙は握られていない。腑に落ちないメイヴァーだったが、内容は、直ぐに分かる事となった。



 *



  メルヴィウスの姿を見かけると、突然駆け出した。廊下の端から走ってきた妹を笑顔で待っていたメルヴィウスだったが、意気込んだリリーの質問にきょとんと碧い目を見開く。


  「メルお兄さまって、スクラローサ王立学院て知ってる?」


  「ああ、だから去年、ほとんどこっちに居なかったろ?」


  「じゃあ私も、来年から通うのよね」


  「………」


  (これか…。さすが左側(アトワ)の血筋だな。煩わしいことをする)


  いつも燃やされるはずの手紙が、今回は保管された理由。それに気づいたメイヴァーは、内心で送り主に苛立ち悪態を吐いた。


  見ると問われたメルヴィウスも、不機嫌を顕に目を眇めている。


  「…お前は、行かないだろ」


  「なんで? だって来年、十六歳なのよ。貴族の子供は十歳とか、もっと前から通うこも居るらしいわよ」


  「なんだそれ、誰がそんなこと言った?」


  「…誰でもないわよ。私が自分で調べたの。優秀でしょ?」


  「……」


  「えへへっ」


  「あ、こら!」


  明らかに嘘をついて走り逃げたリリー。それを追いかけようとしたメルヴィウスだが、代わりに走り出したメイヴァーの意味深な会釈に、やましく逃げたリリーを仕方なく見送った。


  「行かすワケねーだろ、あんな所。来年は十六なんだぞ。……おい」


  後方に待機していたメルヴィウスの護衛は、主と同じ様に魔除けを肌に刻んでいる。その一人をメルヴィウスは呼びつけた。


  「リリーにおかしな事を吹き込んだ者がいる。探し出せ」


 


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